動物病院で獣医師として働いていると、休日ゆっくり休めないこともありますよね。
その理由は、
- 担当している患者さんの状態が心配(心理的なこと)
- 病院から仕事内容の確認の電話がかかってくる
- 担当している患者さんの急変
- セミナー参加
などがあげられます。
セミナーも自分の意志で自主的に参加するのであればストレスもありませんが、病院から強制されるケースもあります。
勤務時間が長く、残業も多い獣医師が休日をしっかり休むことはとても重要です。
この記事では、動物病院勤務の獣医師が休日ゆっくり休めない理由と、休日を確保するための方法について解説したいと思います。
- 獣医師が休日をゆっくり休むメリット
- 獣医師がプライベートな時間を確保する方法
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
休日をしっかり休むメリットとは?
動物病院で働く獣医師の勤務時間は平均14時間ほどになります(経験則)。
私は3カ所動物病院を経験していますが、始業が8時~8時半、終業は早くて9時代、夜の手術や診療時間後の勉強会などが入ると日をまたいで1時を過ぎることもありました。
もうヘトヘト・・・ただただ早く横になりたい。。。
このように仕事のある日は朝から晩まで働きづめです。自宅には、本当に寝るために帰っているような状態でした。
だからこそ休日はしっかりと休むことが重要です。
休日仕事から離れて心身を休めるメリットはたくさんありますが、ここでは3つに絞って解説したいと思います。
メリット①:仕事の質が上がる
休日しっかり休むメリットの1つ目は、仕事の質が上がることです。
休日、仕事から離れてプライベートな時間を充実させることで、心身ともにリフレッシュすることができます。
獣医師は肉体労働的な側面が強いですが、頭脳労働者でもあります。
患者さんの主訴から、考えられる疾病を鑑別診断しなければいけません。
例えば、嘔吐を主訴とした症例の場合、動物の全身状態を確認しながら
- 嘔吐なのか吐出なのか
- 嘔吐物の内容とその頻度は
- 元気や食欲があるかどうか
- 異物を口にした可能性はないか
などを確認し、必要があれば血液検査を行うのが一般的な流れです。
血液検査の結果から各数値をみて、原因が感染なのか炎症なのか、内分泌に起因している可能性が高いのか、腎臓や肝臓に異常はないか・・・?
内視鏡検査や造影などの検査を追加で行うことが妥当かどうか?
順を追って、あらゆる可能性に対応できるようにしておかなければいけません。(あらかじめ知識があることが前提になります)
このように肉体的な面だけではなく、疾病の鑑別、処置や手術の手順、必要な薬の選択・・・など、日々知識のインプットとアウトプットを繰り返しています。
当然脳疲労を起こしてくるので、体だけではなく脳も休める必要があります。そうすることで、再度仕事に取りかかった時に仕事のパフォーマンスも上がってくるのです。
メリット②:自分と向き合う時間がとれる
休日しっかり休むメリットの2つ目は、自分と向き合う時間がとれることです。
人生レベルで幸せを考えた時に、仕事以外にも幸せを構成する要素はあるはずです。
例えば、健康であることだったり、家族、趣味、お金、人とのつながりなど、様々な面がある程度充実することで多くの人は幸福感を得ているのではないかと思います。
私は2人目の子を妊娠した時に、妊娠2ヶ月で切迫流産の宣告を受け、約半年寝たきり生活を余儀なくされました。
上の子のお世話をすることも遊んであげることもできず、掃除も料理も一切の家事をすることができませんでした。
もちろん外出は検診で病院に行く時だけ。。。
なんとか無事出産を終え、自由に動けるようになった時の感動は今でも忘れられません!
普段忘れがちですが、健康って本当にありがたいことです!
そして自分と向き合う時間をとることの最大のメリットは視野が広がることです。
仕事のことばかり考えていれば知識は増えるかもしれませんが、仕事以外に意識が向いていないので視野は狭いままです。
「仕事」という枠を抜けることができません。
仕事という枠を抜けて視野が広がると、飼い主さんの気持ちを汲み取れるようになったり、スタッフとの関係が良くなったり、病気を治すということ以上にどうすることが動物にとって一番良いことなのか、という視点を持つことができるようになったり・・・結果的に仕事にもプラスになることがたくさんあります。
次の記事では、視野を広げるメリットや方法について解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください!
メリット③:仕事に対し前向きな気持ちになれる
休日しっかり休むメリットの3つ目は、仕事に対し前向きな気持ちになれることです。
脳が疲れている状態だと、人は前向きな思考ができなくなってしまいます。
例えば、午前中病院が空いている時間に急患がきたら「早く診てあげないと」という気持ちになりますが、何日も長時間の残業続きで、その日も最後の患者さんの診察が終わってやっと帰宅できる!となった時に急患がきたら、同じテンションで引き受けることができるでしょうか?
もちろん何とかしてあげたいけど、出鼻をくじかれた感が
ありますよね ^^; (私だけ?)
オンとオフを区別することは、仕事の質を保つ上でも重要です。
光があるから影ができるように、オフがあるからオンのスイッチが強く入ります。
仕事に対するモチベーションを保つことは、自分にとっても患者さんにとってもプラスの要素しかありません。
次の記事では、前向きな気持ち(プラス思考)を持つことの重要性をはじめ、働く上で重要なマインドについて解説しているので、ぜひ参考にしてください!
もし休日も仕事に追われるのであれば・・・
では、どうすれば休日しっかり休むことができるのでしょうか?
しっかり休むことが大事なのはわかったけど、急に生活を変えられないし・・・
病院から急に電話がかかってくることもあるし、診察の合間に勉強する時間なんて確保できない・・・
確かに病院からの電話を無視することはできないし、獣医師として常に知識をインプットすることも必要です。
私見になりますが、ここでは自分の時間を確保するための具体例をご紹介したいと思います。
具体例⓵:有休消化率の高い病院を選ぶ
具体例の1つ目は、有休消化率の高い病院を選ぶことです。
有給休暇の付与についてはきちんと法律で決まっています。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用:労働基準法第39条
つまり、勤務開始から6カ月継続して、かつ8割以上出勤していたら10日間有給休暇がもらえるということが法律で定められています。
有休の使用は労働者の権利です。
それでもやりがい搾取の起こりやすい動物病院では、「有休取得=やる気がない」とみなされたり、そもそも有休自体が取りにくい雰囲気だったりするケースも多々あります。
そこを出る杭になって問題解決するのは時間の無駄になる可能性が高いです。
院長の問題意識が高ければ、そもそも有休消化率は高いはず!
一番簡単で確実なのは、初めから有休消化率の高い病院に就職することです。
有休消化率は一部の転職サイトに掲載されていることもありますが、転職エージェントをとおして確認することもできます。
有休消化率だけではなく、福利厚生の詳しい内容や、残業時間がどのくらいなのかについても、代行して病院に確認してくれます。
費用も無料なので、転職を考えている人は情報収集のためにも、ぜひ利用してみてください ^^
具体例②:企業病院に就職する
具体例の2つ目は、企業病院に就職することです。
資金力があり、福利厚生が整った企業病院では、セミナー参加は勤務扱いになります。
勤務に該当するので、もちろん実費も支給されます。 (注:これは実際に企業病院に就職した知人やエージェントから聞いた話になるので、全ての企業病院に当てはまるかはわかりません)
勤務日にセミナー参加することができれば、休日は自分の時間を過ごすことが可能になりますよね。
具体例③:スタッフとの信頼関係の構築
具体例の3つ目は、スタッフとの信頼関係を構築することです。
休日に病院から電話がかかってきてしまうのは、スタッフ間だけでは解決できない問題があるからです。
それにはしっかりと引継ぎをする必要がりあます。
- 担当の患者さんが今どういう状態で、急変した場合はどういう対応をすればいいのか
- 自分が休みの日にどの患者さんが来院する可能性があるのか
- カルテをしっかり書く
以上のことに注意して、自分がいなくても病院が回るようにしっかりと引継ぎをすることが重要です。
そして、普段からカルテに記録を細かく残すようにしましょう。
- どういう処置・治療をしたのか
- なぜその処置・治療をすることになったのか
- 改善しなかった場合の対応
- 飼い主さんへどう説明してあるのか(飼い主さんとのやり取り)
最低限、以上の4項目を日ごろから書き残すようにしましょう。
そして、引き継いだことをしっかりと実行してもらうために、日ごろからスタッフとの信頼関係を構築しておくことは必要不可欠です。
信頼関係ができていないと引継ぎをしても
「後で何か文句言われたら嫌だし・・・」
「どうせ自分の担当している患者さんじゃないし・・・」
という意識が働いてしまい、電話がかかってきたり、休日出勤を求められることになってしまいます。
もちろん自分の意志で出勤するのは問題ありませんが、その場合は働いた分しっかり休みましょう。
次の記事では、動物病院での人間関係の問題について解説しています。
同僚スタッフと円滑な関係を築くためにも、ぜひ参考にしてください!
具体例➃:自主勉強はルール決めをする
具体例の4つ目は、自主勉強はルール決めをすることです。
日進月歩の獣医療では、日々研鑽が求められます。自主勉強なくしてスキルアップは望めません。
でも、忙しい診察時間の合間だけでは勉強時間が足りないこともありますよね。
必然的に休日を勉強時間にあてなければならず、オンとオフが曖昧になりがちです。
有休を利用してしっかり休みながら勉強もする、ということも可能ですが、それも限りがあります。
どうしても避けられない場合は、自分の中でルール決めをするようにしましょう。
例えば、
- 休日を勉強にあてるのは月に何回まで
- 1日に勉強する時間は何時間まで
- 回数や時間をオーバーしてしまったら有休を1日とる
このように自分の中でルールを決めておくことで、休日一定時間自分の時間を確保することが可能になります。
まとめ
今回の記事では、獣医師が休日をゆっくり休むメリットと休日を確保するための方法をご紹介させていただきました。
休日をしっかりと休むことは自分の人生を豊かにするためにも、質の高い仕事をする上でも重要なことです。
それでも動物病院はやりがい搾取が起こりやすい現場です。
そして狭い環境の中、限られた人数で仕事をしていると価値観がぶつかり合い、どう頑張っても解決しない問題も出てくるかもしれません。
そんな時、転職は前向きな選択肢です。
他人の価値観を変えることよりも環境を変える方がはるかに簡単です。
コメント