「残業を減らしたくて小規模な病院に転職したら、院長がワンマンでやりたいことができない」
「アットホームな病院だと思って転職したら、人間関係が濃くて疲れる」
「経験を積むために症例数の多い病院に転職したら、やりがい搾取で条件通りのお給料がもらえない」
心機一転、再スタートを切ろうと転職をしたにも関わらず、上記のように決して成功とはいえない事例をよく耳にします。
特に個人経営の動物病院は、院長に経営の知識が不足していたり、スタッフが少ない分人間関係が密なことが多く、肌に合わないと続けていくことが苦痛になってしまいます。
そのため、労働環境や人間関係が原因で、転職を繰り返してしまう人も少なくありません。
転職を成功させるためには、事前準備ができているかどうかがとても重要です。
この記事では、転職を検討するタイミングや獣医師が転職に失敗してしまう原因、転職をする前にやっておくべき事前準備について解説します。
- 転職を検討するタイミング
- 獣医師が転職に失敗してしまう原因
- 転職をする前にしておくべき事前準備について
- 効率よく転職をするための方法
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
そもそも転職は必要?それとも我慢が足りない?
石の上にも3年ということわざがありますが、仕事はとりあえず3年は頑張って続けた方がいいと耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
「とりあえず3年」と言われるのには、次のような理由があげられます。
- 企業側が採用コスト、教育コストを回収するため
- 社会人としてひと通りのことができるようになる
- 退職金が出るようになる
- 転職に有利
とりあえず3年働くべきかどうかについては、次の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください!
確かに、短絡的に転職の決断をしてしまうと失敗するリスクが高く、続けることで仕事の楽しさややりがいに気づくこともあります。
しかし時代は変わり、働き方の多様化に伴い仕事に対する価値観も変化してきています。
日本では長い間年功序列、終身雇用が一般的で、一つの会社で長く勤めていれば良い待遇が期待でき、それが誠実で安定した働き方という価値観がありました。
しかし経済成長の低迷により、終身雇用を維持できる体力のある会社は大きく減ってしまいました。
今は自分の将来(老後)の責任は自分で取ることが求められ、スキルアップやキャリアアップを目的として転職をすることが一般的になりつつあります。
そうした背景もふまえ、以下の人は転職を検討するタイミングにあるのではないかと思います。
- ブラックな環境で心身に悪影響が出ている人
- 目指すキャリアプランが実現できないことが明らか
- 周囲の人とのコミュニケーションに違和感をもつ
心身に悪影響が出ている場合はもちろん続けるメリットよりもデメリットが上回りますし、病院や会社の方針が自分の目指す方向と違う場合も、仕事を続けることは返ってリスクとなります。
また、以前は気にならなかったのに、最近周りの人と波長が合わなくなってきたり、コミュニケーションに違和感をもつようになったら、良い意味で転職するタイミングかもしれません。
類は友を呼ぶということわざにあるように、人は自分と同じような考え方や行動をする人と一緒にいると心地よさを感じます。
周囲に違和感をもつようになった(心地よくなくなった)ということは、あなたが成長したサインです。
その成長を無駄にしないためにも、自分に適した環境に身を置くことは、より能力を飛躍させるために必要なことと言えるでしょう。
転職の成功とは?
転職の成功とは何でしょうか?
どんな病院、職場でもいっしょに働いている人がいる限り100%自分の意見が通ることはありません。
そして、必ず1人や2人苦手な同僚はいるものです。
また、人と人には相性があるので、例えばあなたが院長に不満を持っていたとしても、他の人は問題だと思っていない場合もあります。
自分の中で譲れない条件、最低限保障してもらいたいこと、今後のために経験しておきたいことなどを踏まえ、その転職の意義を考えてみてください。
大なり小なり不満は出てくるものなので、いずれにしても自分の中で折り合いをつけながら働くことになるということを心に留めておきましょう。
仕事を通してどんなことを実現したいのか、自分の中にミッションがあるとそれが軸となり、周囲の環境に流されにくくなります。
次の記事では、働く目的を考えることの重要性について解説しているので、ぜひ参考にしてください!
獣医師が転職に失敗してしまう原因
転職に失敗してしまうのは事前準備が足りないことが大きな原因ですが、ここでは転職失敗につながる具体的な原因を挙げたいと思います。
一般的に考えられる事例ですが、実は①以外は私も経験したことです^^;
原因①:紹介に頼ってしまう
転職に失敗してしまう原因の1つ目は、紹介に頼ってしまうです。
どこの病院がいいのか、HPや口コミサイトからだけでは参考にはなっても、はっきりとわからないこともありますよね。
そんな時、気心の知れた友人から「あそこは○○で良いらしよ!」という話を聞いたり、むしろ本人が実際に働いている病院に誘われたりしたら、信用してしまうのは人として自然なことです。
しかし、相手が本心から良いと思っていても、あなたにとって良いかどうかは別問題です。
私が働いていた病院で実際にあった例ですが、私が以前勤務していた病院には、1学年上の先輩獣医師が2人いました。
1人はもう片方に誘われて転職してきたのですが、元々いた先輩は臨床系研究室出身ということもあって手際も良く、院長にとても気に入られていました。
一方、誘われて入った方の先輩はマイペースな性格なためか院長と相性が合わず、結局3年ほどで転職してしまいました。
このように、人からの紹介は信用を置きやすい反面、失敗してしまうケースも多く見られるので注意が必要です。
紹介を受けた時は、実習に行くなどして自分に合うかどうかを自分自身で判断することが重要です。
原因②:求人情報を鵜呑みにしてしまう
転職に失敗してしまう原因の2つ目は、求人情報を鵜呑みにしてしまうです。
転職活動には情報収集が欠かせません。
HPの採用欄や求人サイトには、業務内容、契約期間、賃金の額、休憩時間など法律で定められた項目を記載しなければなりません。
私は求人サイトで見た条件で病院に面接に行ったところ、「お給料○○円でよかったよね?そう書いてあったよね?」と記載内容より少ない金額を提示されました。
私の場合は働き始める前、面接の段階で確認されたのでまだよかったと思います。
院長も単純に掲載した内容を忘れてしまっていただけなのかもしれません。
でも、経営者としての素質は問われますね・・・^^;
虚偽記載?!と思わず身構えてしまいますが、必ずしも募集要項に記載されている内容通りでなかったとしても虚偽記載となるわけではないようです。
求人者、労働者の募集を行う者及び労働者供給を受けようとする者(供給される労働者を雇用する場合に限る。)は、それぞれ、求人の申込みをした公共職業安定所、特定地方公共団体若しくは職業紹介事業者の紹介による求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者と労働契約を締結しようとする場合であつて、これらの者に対して第一項の規定により明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下この項において「従事すべき業務の内容等」という。)を変更する場合その他厚生労働省令で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない。
職業安定法5条の3
掲載する条件はあくまでも「見込み」で、全てが適用されるわけではありません。
法律では労働条件を明示しなければならないとされていますが、労働条件の明示は書面での交付が義務付けられていて、「雇用契約書」や「労働条件通知書」の形をとることが一般的です。
× 労働条件の明示≠求人の掲載内容
〇 労働条件の明示=雇用契約書、労働通知書など
そうは言っても、個人病院だと契約書や通知書なんて立派なものはない場合も多いですよね・・・
求人情報を見て転職をする場合、契約書を作ってもらうようお願いするのが一番安心です。
ペーパーレス化への対応として、平成31年4⽉1⽇からFAXやメール、SNSなどでも明示できるようになりました。
原因③:実習に1日しか行かない
転職に失敗してしまう原因の3つ目は、実習に1日しか行かないです。
動物病院では面接の代わりに(もしくは面接を兼ねて)実習を受け入れていることが一般的です。
診察の流れや処置の仕方などは院長の方針が強く反映されるため、その病院それぞれのやり方があります。
その病院のやり方に触れる意味もありますが、実習は病院の雰囲気や一緒に働くことになるスタッフの人間関係を知る上でも重要です。
そのため、1日実習しただけでは把握できることがかなり限られてしまいます。
もし、たまたま実習に行った日が患者さんが少ない日であれば、スタッフは余裕を持って丁寧に対応してくれる可能性が高いです。
でも、もし患者さんが多く忙しい日に当たっていたら、誰も相手にしてくれず、その病院で働くのは厳しいと感じるかもしれません。
その日の状況によって病院やスタッフの雰囲気も変わってくるので、できれば1週間ほど実習をするのが理想です。
そこまで時間的な余裕がない場合でも、最低3日は実習するのが望ましいです。
3日あれば、多少なりとも多面的に病院を評価することができるのではないかと思います。
原因➃:1つの条件にこだわり過ぎる
転職に失敗してしまう原因の4つ目は、1つの条件にこだわり過ぎるです。
今の職場に不満を感じたり、さらなるスキルアップを望んだ時、転職という選択をすることが一般的だと思います。
しかし、今の職場に足りないことを補うために、1つの条件にこだわり過ぎると失敗につながってしまいます。
例えば、
- 休日出勤や残業を少なくしたい ⇒ 勤務のゆるい病院を探す
- 院長のパワハラが耐えられない ⇒ 親しみやすい院長がいる病院を探す
- 診察や手術をさせてもらえない ⇒ スキルアップができる病院を探す
このように1つの欠点を補うことに焦点を当てすぎてしまうと、後になって他の欠点が目につき結局「ここでもやっていけない・・・」と思ってしまうことになります。
上記でも触れましたが、自分の要求を100%満たせる職場はありません。大なり小なり不満を感じる部分は出てくるので、その部分と自分が折り合いをつけられるかが重要になってきます。
どうしても譲れない条件をピックアップすることは必要ですが、実習に行って全体のバランスを見ることが重要です。
失敗しない転職の4つのポイントとは?
そんな失敗してしまう原因を踏まえた上で、失敗しない転職のポイントを4つご紹介します。
- マインドセットをする
- 自己肯定感を高める
- ライフキャリアを設定する
- 情報収集をする
一見すると転職とは関係ないことのように思えることもありますが、いずれも転職の失敗を避けるためには欠かせない要素です。
ここでは、この4つのポイントについて解説します。
POINT①:マインドセットをする
失敗しない転職のポイントの1つ目は、マインドセットをするです。
いくら頑張って条件の良い病院を探すことができたとしても、マインドセットができていないと転職を失敗だったと感じてしまう危険性があります。
教えってもらうのを待つだけではなく、自ら学ぶ姿勢がなければ周りの人も協力したいという気持ちにはなりません。
また、都合の悪いことを周りの人のせいばかりにしていたら、スタッフとの人間関係が悪くなるばかりでなく自分自身も成長することができないでしょう。
条件の良さばかりを求めるのではなく、自分もその場所と波長を合わせないと結局働きにくいと感じることになってしまいます。
マインドセットの詳しい内容は次の記事でも解説しているので
ぜひ参考にしてみてください!
POINT②:自己肯定感を高める
失敗しない転職のポイントの2つ目は、自己肯定感を高めるです。
自己肯定感が低いまま転職をしてしまうと、新しい環境になじむことができなかったり、周囲の期待に応えられないことに自信をなくし、転職を失敗だと感じてしまう可能性が高くなります。
上記しましたが、動物病院は院長の方針によって診察や処置など、やり方は様々です。
そのため、慣れによってできていたことが通用しないのは当然のことです。
1年生になったつもりで一つ一つ覚えていくしかありません。
この時自己肯定感が低いままだと、以下のように考え、過度に自分を責めてしまいがちです。
「同じことをまた聞いてしまった・・・」
「獣医になってもう3年経つのにこんなこともできない・・・」
転職をする前に自己肯定感が低いのかそうではないのか、自分自身について振り返ってみましょう。
低いと感じたら自己肯定感を高める方法を知り、少しづつでも実践することで結果は大きく変わってきます。
POINT③:ライフキャリアを設定する
失敗しない転職のポイントの4つ目は、ライフキャリアを設定するです。
転職を考えた時に、譲れない条件をピックアップする人は多いと思います。
一定数の人は仕事のキャリアについての見通しを立てるかもしれません。
しかし、ライフキャリアの設定をする人はほとんどいないのではないでしょうか。
仕事だけではなく家事や子育て、趣味、地域の人との関わりなどプライベートな活動含めた全てにおいて、果たす役割や経験の積み重ねのこと
人生は仕事だけで成り立っているのではありません。
仕事だけ上手くいってもパートナー、家族、友人、趣味など、他の要素が満たされなければ充実した人生にはならないでしょう。
転職をする前に、仕事だけではなく今後のライフイベントを含め、ライフキャリアの設定をすることをおすすめします。
ライフキャリアを設定すると、今やるべきことが逆算してわかるようになるので、迷いなく仕事にも邁進することができるようになると思います。
POINT➃:情報収集をする
情報収集は転職活動の生命線です。
転職活動を成功させるためのポイントは上記したようにいくつかありますが、やはり良質な情報を得ていることが大前提です。
情報化社会真っただ中の現代では、情報はお金に匹敵する価値があります。
情報収集を怠ると就職してからミスマッチに気づき、後悔することになってしまいます。
転職を経験した人の多くが、転職失敗の理由として「リサーチ不足」や「他社との比較検討不足」をあげているという調査結果もあり、どれだけ情報収集できるかが転職成功のカギを握っていると言えます。
さらに転職を成功させるためには、この転職を最後にする!という強い気持ちで臨むことも重要です。
そしてその自信を確かなものにするためには、情報収集が絶対に必要です。
希望条件に合った職場でも、自信をもって就職するのと、不安を抱えたまま就職するのとでは、実際に働き始めた後の印象が大きく違ってきてしまいます。
次の記事では、具体的な情報収集の方法と情報収集をする上でおさえておきたいポイントについて解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください ^^
転職活動を効率化するおススメの方法
転職に失敗する原因を取り除いたり、転職の事前準備を済ませておくことは、いわば転職活動の基礎となる部分です。
その上で、効率よく転職活動を進めることが重要です。
なぜなら、仕事が忙しくなり転職活動が思うように進まないと、モチベーションが落ち妥協した選択をしてしまうからです。
でも仕事が忙しい中、効率的に転職活動を進めるには
どうすればいいんだろう?
しかも求人情報に書いてあることが100%正確じゃない
ってなると、どうしたらいいのか・・・
おすすめするのは、求人サイトなどで情報収集をしつつ、並行して転職エージェントを利用する方法です。
転職エージェントが扱う案件は、ブラックな求人が排除されているだけではなく、ネット上に掲載されていない非公開の求人情報も保有しているため、効率よく情報収集したい場合にはとても便利です。
また、転職エージェントは募集要項に記載されていない雇用条件や、面と向かって聞きにくいお給料やスタッフの有休取得状況についても、代行して確認、交渉をしてくれます。
転職エージェントを利用することで、職場の雰囲気や院長の人柄、企業がどんな人材を求めているのかなど、表面化しにくい情報を得ることもできます。
ネット上では、以下のようなネガティブな口コミも見かけますが、私が利用したエージェントはいずれもそのようなことはありませんでした。
「電話やメールがしつこかった」
「提示した条件とは全く違う案件を紹介された」
また、転職エージェントは、実際に転職を検討している人だけではなく、転職をするかどうか迷っている人でも利用することができます。
しかも、実際に転職してもしなくても無料です ^^
以下に当てはまる人は、ぜひ転職エージェントを利用してみてください!
- 何となく将来が不安
- 今の働き方に疑問を感じている
- 今後のキャリアプランを相談したい
- 効率よく転職を進めたい
- ネット上に載っていない情報を知りたい
- 直接雇用条件を交渉するのが苦手
- 自分の市場価値を知りたい
- 自分の経験やスキルを客観的に判断してもらいたい
次の記事では、Vet Agent(ベットエージェント)という転職エージェントについて、実際に利用した体験をもとに解説しています。
転職エージェントって怪しい・・・そう思っている人はぜひ参考に読んでみてくださいね!
まとめ
今回は、獣医師が転職に失敗してしまうための原因と転職をする前にやっておくべきことにつて解説しました。
私は正社員として3回転職を経験していますが、いずれも失敗に終わったと感じています。
失敗の原因は、自力で求人を探したため情報収集が不十分で、目先の条件ばかりにこだわりすぎて視野が狭くなっていたためです。
転職を成功させるためには、先ずは自分自身を整え、より多くの良質な情報を収集することが重要です。
そのためには、何のために働くのか、仕事を通してどういう未来を実現したいのかについて一度じっくり考え、しっかり準備してから転職に向けて動き出すようにしましょう。
転職して良かった!と思え、生き生きと仕事ができるように、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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