動物病院で働く獣医師の仕事は忙しく、激務です。
多くの病院は午前と午後の診療の間、12時~16時前後を閉院しているケースが多いと思いますが、その間も決して休んでいるわけではなく、入院患者の処置や検査、手術などを行っています。
忙しい時は、お昼ご飯を食べるだけ食べてすぐに仕事に戻らなければならなかったり、時には食べ損ねてしまうこともありますよね。
また忙しいとミスも起こりやすくなり、自己嫌悪から自信をなくしてしまうこともあるのではないでしょうか。
時には、獣医を辞めたい、向いていないんじゃないかと思ってしまうこともあると思います。
そんな時、「そんなこと考えちゃいけない!」「もっと頑張らないと!」と自分を叱咤して気持ちを抑え込もうとしがちです。
実は、自分の気持ちを抑え込んで無理に頑張ろうとするのはとても危険です!
自分の素直な気持ちを一度きちんと受け止めてあげないと、抑え込んだ分ストレスがたまり周囲との人間関係に影響したり、視野が狭くなって冷静な判断ができなくなってしまいます。
私は医療従事者としてある程度のメンタリティを保つことは必要だと思っています。そのため、メンタリティの維持は獣医師として重要なスキルの1つと言えます。
今回の記事では、仕事が忙しくて辛い、辞めたいと思ってしまった時の対処法を解説したいと思います。
臨床に向いていないかも、獣医師になんてなるんじゃなかったと悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
- 感情を受け止めるメリット
- 感情を受け止める方法
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
感情を否定するのはNG!
人は様々な感情をもった生き物です。
生物的な話になりますが、感情は人が生き残る上で大切な機能を担っています。
自分の身に危険が迫った時に「恐怖」を感じなければ死んでしまうケースもあるでしょう。
また、「喜び」などのポジティブな感情は、遊び心や探求心を促して選択の幅を広げる(=長期的にみて生存に役立つ)ことになるといわれています。
人は疲れが溜まると脳の前頭葉の機能が低下し、感情をコントロールしにくくなります。
それでも、それを否定したり無理やり抑え込んでしまうのはとても危険です。
感情は必要だからあるもので、理性(=前頭葉)の力で抑え込んでも感情(=本能)には勝てません。
感情を抑え込むと、返ってそこから抜け出すことが難しくなります。
まさに新人獣医師として働いていたころの私がそうでした ^^;
病院の中で新人が私1人だったこともあり、てきぱき仕事をこなす周りの先生みんなが自分とは遠い存在に感じて、「もっと頑張って勉強しないと!」と余計なプレッシャーを自分にかけてしまっていました。
ミスをしたり、先輩の指示どおりに仕事がこなせないと落ち込んで、そんなことが重なると「私って獣医に向いていないのかも・・・」と逃げの姿勢に入ってしまうことがよくありました。
感情を抑え続けているとストレスが溜まり、周囲の人間関係に悪影響を及ぼしたり仕事でミスを誘発することにつながります。
ミスが重なれば自信をなくし、さらにストレスがたまり・・・という悪循環に高確率で陥ります。
自分が望まない感情(ネガティブな感情)が生まれたら、否定せずに先ずは素直に受け止めることが大切です。
1年目ということもあり「働く」こと自体に慣れていなかったせいで、力の抜き方がわからなかったんだと思います。
今振り返ってみると、社会人として必要なマインドも足りていませんでした。。。
次の記事では、獣医師に限らず仕事をする上でとても重要なマインドについて解説しているので、ぜひ参考にしてください!
感情を受け止めるメリット
感情を抑え込む危険性を述べましたが、ここでは感情を受け止めるメリットについて解説したいと思います。
感情を上手に処理できるようになると、周囲の人との関係性も改善したり、視野が広がり仕事の質が上がるなど好循環を生み出します♪
感情を引きずらない
感情を素直に受け止めるだけで、逆にその感情から解放されます。
「そんなこと考えちゃだめだ!」
「弱音なんて吐かずにもっと頑張らないと!」
そう思うことで、表面上は気持ちを切り替えることができるかもしれませんが、感情自体は心の中に押し込められたままたまっていきます。
その瞬間は上手く切り替えられた気になるので、また同じような状況になると同じ方法を取ることになり、ネガティブな感情はストレスという形で心の中に蓄積されていきます。
そして限界までくるとバーンアウトや心身症といった形で、ダムが決壊したように突然あふれ出してしまいます。
自己肯定感が高まる
自分の感情(気持ち)を受け止めるということは、ありのままの自分を受け止めるということです。
良い部分も悪い部分も無条件に受け入れることで「それじゃあどうすればいいだろう?」と、思考がフラットになります。
前向きに解決策を考えることができるようになるので、そんな自分に価値を感じることができるようになり自己肯定感も高まります。
ストレスの緩和
感情を否定したり、抑え込むことがなくなればストレスも減っていきます。
ストレスとは外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のことです。
今回の例の場合、外部からの刺激=自分の感情を抑え込むことです。
感情を抑え込む(外部からの刺激)がなくなれば、ストレスも自然となくなるということです。
次の記事では、自己肯定感について詳しく解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください!
冷静な状況判断ができるようになる
感情を受け止めることで思考がフラットになると視野が広がります。
感情的になっている人や「そんなこと考えちゃいけないいけない・・・」とそのことばかりにとらわれている人は、その一点に視野が集中してしまっている状態です。
視野を広くもつことができると周囲の状況を客観視できるようになり、冷静な状況判断ができるようになります。
思考をフラットにして「それじゃあどうしたらいい?」と考えることができるようになると、解決策や対処法を導くために周囲の状況に目を向けるようになるので客観的に物事を判断することができるようになるのです。
感情を受け止めるためにはどうしたらいい?
感情を抑え込まない方がいいのはわかったけど、具体的にどうしたらいいの?
感情を「受け止める」ってどうやったらいいの?
感情はそれ自体が本能的なものなのでコントロールするのは難しいですよね。
世の中には様々な感情をコントロールする方法について書かれた本がありますが、今回は『反応しない練習』という本を参考に解説したいと思います。(おススメ本です!)
心の状態を言葉で確認する
これはやり方はとても簡単で、単純にその時素直に感じたままを口に出すだけです。
例えば「獣医に向いていないかも・・・」「獣医を辞めたい」と思ったら、そう思ってしまった原因を少し考えてみてください。
原因に思い当たったら、
- 「疲れがたまっていてイライラしているな」
- 「簡単な処置なのに上手くできなくて今落ち込んでいるんだな」
- 「初めての症例を上手く診れるか緊張しているんだな」
というように実際に言葉に出して客観的に確認します。
感情はだいたい整理されていません。何となくモヤモヤしていたり、○○な感じ、というように心の中にある時はほとんどが抽象的な状態です。(疲れていると特に!)
実際に言葉に出すことで感情が整理され、無駄な反応から抜け出すことができます。
これを習慣化すると心も落ち着いて無駄に落ち込んだりすることが減ってくると思います。
心の状態を分類する
この本では心の状態を
- 貪欲…過剰な欲求に駆られている状態
- 怒り…不平、不満を感じている状態
- 妄想…ぼんやりと頭の中で何かを考えている状態
の3つに分類します。
ネガティブな感情ってこの3つのどれかに起因しますよね ^^;
余談ですが、「怒り」は第二感情に該当し、その根底には不安や悲しみなどの第一感情が隠れています。
第二感情:第一感情が発生した後に生じる感情
第一感情:喜び、信頼、恐れ、驚き、嫌悪、悲しみなど
ネガティブな感情に襲われたら、相手に求めすぎていないか(貪欲)、それは事実なのか(妄想)、その根底にどんな不安や悲しみかあるのか(怒り)を分類し、理解するようにしましょう。
体の感覚を意識する
「体の感覚を意識すること」と「感情を受け止めること」の間には関連性がないように思えますが、余計な妄想から抜け出すという意味でとても効果的です。
これは、今この瞬間に集中するという意味で、ヨガの呼吸法やマインドフルネスに近い考え方です。
- 手の感覚に集中してみる
⇒「指がこんな感じで動いているな」「手を握るとこんな感覚で、開くとこんな感じだな」 - 呼吸をする感覚に集中してみる
⇒「鼻を出入りする空気の感覚」「お腹が膨らんでいるな、へこんでいるな」
感覚に集中することでネガティブな感情から離れることができ、リラックス効果と落ち着きを取り戻すことができます。
仕事中はそんなことしてる暇はと思うので、家で1人時間を確保してやってみてください。頭がすっきりします ^^
その判断は間違っている?!
そしてもう1つ参考になったことをご紹介したいと思います。
それは、物事の良い・悪い、好き・嫌いを判断しないということです。
「~でなければ」という思い込みは完璧主義や頑張りすぎてしまう性格を作り出し、その結果
- 「いつも失敗してばかり」
- 「自分にはそんなことできない(能力がない)」
という自己否定につながります。
これは一人で勝手に結論を出して判断してしまっている例で、つまり妄想なのです。
本によると、判断が正しいのか間違っているのかの「判断」の基準は、
- 真実であること
- 有益である(役に立つ)こと
です。
いつも常に失敗ばかりのか、やってもいないのに本当に能力がないのかと考えてみれば、それは真実ではないし、自虐的なだけの役に立たない考えです。
曖昧なことを白黒はっきりさせるのは気持ちが良いし、自分が正しいことが証明できると承認欲求も満たされますが、「自分が正しい」と判断してしまった時点で、その判断は間違ったものになってしまうということです。
人が考える多くの判断は、真実でもないし有益でもなく、ただの暇つぶしです。
だから自分が獣医に向いているかどうか、頑張れない自分は人より劣っているのかという無意味な判断はするだけムダです。
どんな時も自分を否定しないと決めましょう。
それは楽観的になれと言っているわけではなく、真実でもなく役にも立たないムダな判断をしないようにするということです。
自分の中の、やることリストに追加しましょう^^!
次の記事では、働く上でだけではなく人として重要なマインドについて解説しています。
これを実践できていると、どんな職業についても上手くいくのではないかと思います ^^
まとめ
忙しく疲れが溜まっていると物事を前向きに考えられなくなってしまい、つい弱音を吐いてしまいますよね。
そんな時は無理に気持ちを切り替えようとするよりも、一度その感情と向き合い受け止めてあげた方が近道です。
感情自体を善悪で判断することを止めて、上手に付き合っていくことが生き生きと仕事をする上で重要です。
忙しさに悩んでいる人は、今回の記事を獣医師としてステップアップするための足がかりとして、ぜひ参考にしてみてください!
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