入ってまだ2ヶ月で病院のこともよくわかっていないのに、いきなり診察に出された。周りに教えてもらうにも忙しそうで聞きにくい・・・
毎日朝から夜遅くまでくたくた・・・
検査と雑用ばっかりで、いつになったら診察や手術をさせてもらえるんだろう・・・
どんな職業に就いたとしても1年目は環境に慣れたり、覚えることが多く精神的なストレスが大きいですよね。
厚労省の調査では、大学新卒者の離職率は1年目が10~15%程度、3年目までの離職率は30~35%ほどです。 (参考:新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況)
これに致して動物病院に就職した獣医師の離職率は他の職種と比べて高く、1年目の離職率は6割を超えるとも言われています。
大卒者の平均的な離職率の6倍近くにもなるんですね!
この数字からも、動物病院勤務の大変さがわかりますね。
今回の記事では、新人獣医師が動物病院の仕事を辛いと感じる理由と1年目を乗り切るためのポイントについて解説します。
- 新人獣医師が動物病院の仕事を辛いと感じる理由
- 動物病院勤務1年目を乗り切るポイント
- 動物病院勤務1年目を乗り切る具体的な方法
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
臨床1年目は病みやすいので要注意!
動物病院勤務獣医師の1年目の離職率が圧倒的に高い理由として、次の3つがあげられます。
- 就職してすぐに繁忙期が訪れる(4~6月)
- 1日中立ちっ放し、動きっぱなしの環境に体が慣れていない
- 新人教育のカリキュラムがない
大学を卒業して社会人1年目として働き始める4月、動物病院は繁忙期を迎えます。
通常の診療に加え、狂犬病ワクチン接種やフィラリア予防の時期を迎えるため、来院する患者さんの数は通常の2倍以上となるところがほとんどです。
新人獣医師は、病院のシステムや診療方針、検査機器の使い方、処方する薬の知識、掃除などの雑務に至るまで、右も左もわからないうちにある程度の戦力になることが期待されます。
数回診察の補助に入っただけなのに独り立ちを求められたり、一度教えたことはできるだろうと思われたり、ひどい時は教えてもらっていないことを知っていると勘違いして頼まれることもあります。
わからないことやミスを防ぐために確認をとろうとしても、忙しさのあまり声をかけるタイミングがないこともよくあります。
自己判断でミスをすれば怒られるのはもちろん、聞いたら聞いたで忙しいのに些細なことを聞くなという態度を取られることもあり、新人獣医師はジレンマを抱えながら新しい環境に慣れていかなければなりません。
新人に対して育成カリキュラムが整っているとそういうジレンマは起こりにくいですが、小規模な病院だとまだ「見て学べ」「察して動け」の方針の病院も多いのが現状です。
また、新卒の獣医師は少し前まで国試勉強で1日のほとんどの時間を座って過ごしていたわけですから、1日中立ちっ放し、動きっぱなしの環境に慣れていません。
さらに、動物病院勤務は長時間労働です。勤務時間が1日に13時間を超えることはよくあることです。
肉体的な疲れに加え、ジレンマを感じながら新しい環境に身を置くのは精神的にもかなりのストレスです。
新人という立場で命に関わる判断を任されることはないと思いますが、やはり患者さんの健康を左右するというプレッシャーも大きな精神的負担になっていると思います。
次の記事では、動物病院勤務が過酷な状況になってしまう原因と獣医師の仕事を続けていくための方法について解説しています。
ぜひ合わせて読んでみてください。
1年目だけど辞めたい…と思ったら
上記のような状況が続けば、ふと「この仕事に向いていないのかも」「辞めたい」と自信をなくしてしまうこともあるかもしれません。
でもそれは視野が狭くなっていることが原因の可能性もあります。
心身が疲れていると冷静に物事が判断できなくなったり、焦りや不安から物事を客観視することができなくなることは誰にでも起こり得ることです。
忙しいと院内の雰囲気もピリピリするので気疲れしたり、定休が連休じゃなかったりすると気持ちの切り替えが上手くできなくて疲れを持ち越しやすかったり・・・とにかく働き始めたばかりの頃は疲れやすいですよね。
疲れや過度な緊張から視野が狭くなると思考がネガティブに傾きやすく、自分の失敗やネガティブな事象にばかり焦点を当ててしまいがちになります。
1年目に限らず、視野を広く持つことは仕事を続けていく上でとても重要です。
視野を広げるメリットとして、次のようなことがあげられます。
- 的確な状況判断ができる
- 問題解決しやすい
- 自分だけではないと気づく
- 現状を受け入れることができる
視野が広がると客観的な状況判断をすることができるので、「きっと○○に違いない」といったような思い込みや偏見を持ちにくくなります。
そして、様々な可能性を検討することができるので選択肢が増え、大変なのは自分だけではないと気づくことができたり、問題だと感じていたことを解決しやすくなります。
また、状況を俯瞰できるようになると辛いことばかりではなく、日々周りの人に助けてもらっていること、学ばせてもらっていることなどに気づくことができるので、現状を受け入れることができるようになります。
そして時が経てば1日中立ちっ放しの環境に体は慣れ、繁忙期は過ぎていきます。
病院は閉鎖的な空間で、かつ限られた人数で毎日仕事を回しているので人間関係のトラブルが起こりやすい環境です。
次の記事では、動物病院で起こりやすい人間関係のトラブルとその対処法について解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください!
視野を広げる方法とは?
視野を広げることが大切なのはわかったけど、具体的には
どうしたらいいの?
ここでは、視野を広げる具体的な方法をご紹介したいと思います。
- 人と会って話を聞く
- 異業種の人と交流する
- 読書
- 情報収集する
- 物事を多角的に見る習慣を身につける(複眼的思考)
読書で様々な人の考えに触れたり、友人や家族、パートナーなど第三者の意見を聞くことは視野を広げる最も簡単な方法です。
自分ひとりで悩んでいると単一的な思考パターンに陥りがちで、思い込みや偏見にとらわれて問題解決をすることができません。
また、獣医師は大学入学時から社会人になってからも、長い間他の業界の人と接点がないという人がとても多い状況です。
友人関係や趣味などを通じて異業種の人と交流を持つと、様々な意見や考え方に触れることができるので視野を広げるために有効です。
SNSでの交流も効果的ですが、無責任な発言をしたり信ぴょう性が疑わしいことを言う人もいるので、情報の取捨選択が必要になってきます。
そして大切なことは、自分自身が日頃から物事を多角的に見る習慣を持つことです。
自分の判断や考えが正しいと思っても、相手の立場から見たらどうだろう、飼い主さんの立場になったらどんな気持ちだろうと、いつも別の角度から物事を見る癖をつけると、視野を広げ客観的思考を身につけることができるようになります。
辛い理由が職場とのミスマッチの場合は・・・
自分なりに努力をしてみてもやはり辛い、悩みが解決しそうにないという場合は、職場とのミスマッチが原因の可能性が考えられます。
院長のやり方や方針に納得できないと、いくら視野を広げてあらゆる選択肢を検討してみても問題が解決しない場合もあります。
自分の考えを院長に提案でき、院長自身がその意見を柔軟に検討してくれるような環境であれば一考の余地はあると思いますが、そうでない場合は転職を選択肢として検討することをおすすめします。
規模の大きいグループ病院などの場合は、分院長によって方針が多少違うケースもあると思うので、部署異動を希望してもいいかもしれません。
病院のやり方や方針というのは院長自身の信念が反映されているとも言えるので、よほどのことがない限り変えることは難しいかもしれません。
人生は有限です。
その限られた時間と労力をどこに使うかはとても重要です。
環境が変わらないのであれば、働く場所を変えるしか方法はありません。
次の記事では、獣医師が転職に失敗してしまう原因と転職を成功させるためのポイントについて解説しています。
転職を選択肢として検討している人は、ぜひ合わせて読んでみてください!
まとめ
今回は、新人獣医師が動物病院の仕事を辛いと感じる理由と1年目を乗り切るためのポイントについて解説しました。
どんな仕事も慣れるまでは大変ですが、特に動物病院は様々な要因で1年目は病みやすい環境にあると思います。
しかし1年目を乗り越え、できることが増えてくると、獣医師という職業はとてもやりがいのある仕事です。
日頃から視野を広く、多くの選択肢を持てるようになると自分にとって何が必要でどうすることが最善なのか、客観的に判断できるようになります。
ぜひ記事を参考に、明日からでも実践してみてください。
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