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動物病院で起こりがちな労働基準法違反とは?泣き寝入りしない対処法についても解説!

PCでデータを調べる男性

経験を積むためには長時間労働も仕方がないのかな?

休日出勤しているのに手当がないのは、法律違反だよね?

動物病院の仕事はペットの命を扱うため、やりがい搾取が起こりやすく、院長に経営知識が不足していることで残業代の未払いや休日出勤手当が支給されないといった労働基準法違反に相当する事例がよく見られます。

あまりにも法律に違反している病院が多いため、それが当たり前だと思ってしまっている人もいるかもしれませんが、一方、そういった働き方に疑問を感じている人も少なくないと思います。

そこでこの記事では、以下の3つについて解説します。

この記事を読んでわかること
  • 動物病院で起こりがちな労働基準法違反の内容
  • 労働基準法違反がスタッフに及ぼす影響
  • 労働基準法違反に直面した時の対処法

この記事を読むと、動物病院で起こりやすい労働基準法違反の内容や、そういった場面に直面した時にどう対処したらいいのかがわかります。

私の身近で起こった労働基準法違反の事例についても紹介しているので、自分の働く環境に疑問を感じている人はぜひ参考にしてください!

この記事を書いた人
  • 動物病院と公務員で3回の転職を経験
  • 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
  • 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
  • 2児の母。
目次

動物病院で起こりがちな労働基準法違反とは?

急患や緊急手術など、動物病院はイレギュラーな事象が起こりやすく、定時で上がれない、決まった時間に休憩に入れないことが日常的という病院も多いのではないでしょうか。

加えて、院長に経営の意識や知識が不足しているために、過酷な労働環境を強いられているという話は本当によく耳にします。

ここでは、動物病院で起こりがちな労働基準法違反の内容について解説したいと思います。

違反①:長時間労働

動物病院で最もよく起こる労働基準法違反は、長時間労働です。

動物病院の仕事は生き物が相手という特性から、容態の急変や緊急手術など、イレギュラーな事柄が起こりやすく、長時間労働が常態化しやすい環境です。

しかし、労働者の労働時間は以下のように定められています。

労働基準法第32条
  • 原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない。
  • 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えること。
  • 少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えること。

そうは言っても、イレギュラーな事柄が起こりやすい動物病院において定時退社の難易度は高いですよね。

そういった場合は、みなし労働時間制を採用したり、変形労働時間制36協定(時間外労働協定)を労使間で締結する方法があります。

  • 変形労働時間制                                            変形労働時間制には、①1ヶ月単位、②1年単位、③1週間単位のものがあり、労使協定または就業規則などで定めることで、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内で、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる。
  • 36協定(時間外労働協定)                                        労使協定で時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められる。(※時間外労働時間に上限があり)
  • みなし労働時間制                                           実際に残業したかどうかに関わらず、あらかじめ決められた労働時間を働いたとみなし、月々固定の残業代を支払う制度。
まめしば

ちなみに、労使協定とは、労働者と雇用主の間で取り交わされる約束事を、書面契約したもののことです。

このような方法を利用して、経営者は従業員の労働時間を適切に管理することが必要です。

違反②:休憩時間が不十分

長時間労働と並行して起こりやすい労働基準法違反が、休憩時間が不十分なことです。

上記したように法律では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を取ることが義務づけられています。

しかし、実際には入院患者の容態の急変や緊急手術のため、休憩時間すら取れないことも珍しくありません。

まめしば

私自身も、「10分でかき込むように昼食を済ませる」「忙しすぎて気づいたら19時・・・」なんてこともありました。。。

また、トータルの労働時間が法律に則って管理されていたとしても、実は休憩なしに一日中働き詰めというパターンもあります。

長時間労働に陥りやすい動物病院勤務だからこそ、休憩時間を十分に取ることはとても重要なことです。

違反③:残業手当がない

長時間労働とあわせて起こりやすい労働基準法違反が、残業手当の未払いです。

動物病院で働く勤務獣医師は、「勉強をさせてもらっている」「経験を積むため」という意識を持つ傾向にあります。

それは、雇用主である院長が「自分が勤務医の時も残業代は出なかったから」「経験を積ませてあげている」という考え方を持っているため、それに洗脳された先輩獣医師や看護師の同調圧力を受けるためです。

まめしば

他の業界を知らない獣医師は、同じような待遇の病院を渡り歩いていると、違法行為であっても「動物病院とはそういうものなんだ」と思い込んでしまいます。

そのため、残業代が支給されないことに疑問を感じなくなったり、疑問を感じても「仕方のないこと」と諦めて泣き寝入りしてしまっているケースは本当にたくさんあります。

私自身、時間外診療費を、その診療に対応したスタッフで分け合うだけだったり(一人当たり残業代は数百円程度)、夕食の仕出し弁当が支給されるだけということがありました。。。

実際には、残業代の支給は労働基準法第37条の規定に則って行わなければなりません。

時間外、休日及び深夜の割増賃金
  • 時間外、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働させた場合には、2割5分以上の割り増し賃金を支給すること
  • 法定休日に労働させた場合には、3割5分以上の割増賃金を支給すること

ただ残業代を支払うだけではなく、休日出勤した場合や午後10時以降まで残業した場合は、割り増し賃金を支払わなければなりません。

みなし労働時間制を採用している病院の中には、すでに給与に残業代が含まれていることから、規定の時間を超えた分の残業代は支払わなくてもよいという考え方の病院もあるので注意が必要です。

まめしば

募集要項に『○〇時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給などの明記があるか確認しましょう。
募集要項に記載がない場合は、就業規則労働条件通知書に記載があるかの確認が必要です。
募集要項を見る時のチェックポイントについては、次の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください!

違反➃:健康診断がない

事業形態や事業規模に関わらず、従業員を1人でも雇うと、事業主には健康診断の実施義務が生じます。(労働安全衛生法第66条

まめしば

労働基準法第42条では、労働者の安全や衛生は労働安全衛生法に則るように定められています。

労働安全衛生法で規定された健康診断は、業務内容に応じた健康障害防止快適な職場環境の形成のために義務づけられているもので、従業員も事業主が行う健康診断の受診を拒否することはできません

健康診断については、以下のように定められています。                    

対象者常時使用する労働者                                           (※常時使用する:1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上である者)
費用事業主の全額負担
種類①雇入時の健康診断雇入れる際、既往歴及び業務歴の調査を目的に実施
(おおむね3ヶ月以内が妥当)
②定期健康診断1年以内ごとに1回のペースで実施  
③特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第13条第1項第2号に該当する従業員が対象。
対象業務への配置替えの際と6ヶ月以内ごとに1回のペースで実施
➃海外派遣労働者の健康診断海外に6ヶ月以上派遣される従業員が対象。
海外に6月以上派遣する際と帰国後に国内の業務に復帰する際に実施。   
⑤給食従業員の検便事業に附属する食堂などで給食業務を行う従業員が対象。
雇入れの際と配置替えの際に実施。
まめしば

日常的にX線を使用する獣医師は、①雇用時の健康診断に加えて③特定業務従事者の健康診断も必要です。

労働基準法違反がスタッフに及ぼす影響

労働基準法に違反することで、そこで働くスタッフだけではなく、病院にとっても様々な悪影響が生じます。

悪影響の具体的な内容については、主に以下の3つがあげられます。

労働基準法違反が及ぼす影響
  • 健康と安全性の低下                                         長時間労働や十分な休憩時間が確保できないと、集中力の低下から事故や怪我につながる可能性が高くなります。また、過度の業務負荷はメンタルヘルスに悪影響を与え、うつ病などの精神的な問題を招くリスクが高まります。
  • モチベーションの低下                                      過酷な労働環境は集中力の低下や疲労の原因になり、仕事に対するモチベーションの低下につながります。
  • 医療とサービスの品質の低下                                       集中力の低下やモチベーションの低下は、提供する医療や顧客サービスの品質の低下につながります。
まめしば

雇用する側の「経費を削減したい」「利益を上げたい」という考えが労働基準法違反につながっているのかもしれませんが、スタッフの不適切な管理は返って悪影響につながることを認識してもらいたいですね。

身近で起こった法律違反の事例

ここでは、私の身近で起こった労働基準法違反の具体的な事例を2つ紹介したいと思います。

事例①:自分でも知らないうちに辞めることになっていた看護師

1つ目は、自分でも知らないうちに辞めることになっていた看護師の事例です。

その看護師さん(以下、Aさん)は病院のオープニングスタッフとして雇用され、私が入職した当時、勤務5年目でした。

少々物言いが厳しい看護師さんもいた中で、Aさんは明るくて人当たりが良く、当時大した知識もスキルもなかった私にも優しく接してくれるような、コミュニケーション能力の高い人でした。

入職したばかりで気が張りつめていた私は、優しいAさんと一緒に働けることがとても嬉しかったのですが、働き始めてひと月もしないうちに、先輩獣医師から「Aさん来月で辞めるらしいよ」という話を聞きました。

しかし、そのことをAさんに確認したところ、「私もよくわからないんだけど、辞めることになってるみたいだよね」という返答があり、びっくりしたのをよく覚えています。

まめしば

懲戒解雇(クビ)を行使するには、「病院のお金を盗んだ」「無断欠勤を2週間以上した」といったような、客観的合理性社会的相当性が必要です(労働基準法第15条、16条)。
推測ですが、院長は経費削減のため、給与が高くなったAさんを解雇したのではないかと思います。。。

事例②:注いだお酒を飲んだら昇給すると言われた獣医師

2つ目は、注いだお酒を飲んだら昇給すると言われた獣医師の事例です。

まめしば

実は、これは私自身のことです ^^;

飲み会の席で院長に言われた言葉なのですが、私が公務員への転職を考え始めたのはこの出来事がきっかけでした。

酔った勢いの冗談だったのかもしれませんが、院長への不信感が消えず、結果的に転職する決断をしました。

この出来事については、プロフィールに詳しく書いているので、興味のある人は読んでみてください。

労働基準法違反に直面した時の対処法

上記で紹介した事例はほんの一部で、見たり聞いたりしたものを含めると、法律に触れるような事例は本当にたくさんあります。

でも、法律違反があることがわかったところで、どうしたらいいのかわからないし・・・

自分の置かれている環境が法律に違反していると気づいていても、どうしたらいいのかわからない人も多いと思います。

ここでは、労働基準法違反に直面した時に、泣き寝入りしないための対処法について6ステップで解説します。

STEP①:法律を正しく理解する

先ずは、あなた自身が法律を正しく理解することが重要です。

自分の職場で起きていることが、どの法律のどこに違反しているのかの根拠が必要だからです。

主な労働関係の法律を以下に5つあげるので、職場環境に疑問を感じている人はぜひチェックしてみてください。

  • 労働基準法                                                労働条件に関する最低基準を定めた法律。
  • 労働安全衛生法                                             職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的に定められた法律。
  • 労働者災害補償保険法                                         業務上または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して必要な保険給付などを行うことを目的に定められた法律。
  • 労働契約法                                              トラブルの未然防止や労働者の保護を図るため、労働契約についての基本的なルールについて定められた法律。
  • 労働関係調整法                                        労使関係の公正な調整を図り,労働争議の予防や、すみやかな解決を目的とする法律。

STEP②:証拠を集める

違反があることがわかったら、次にやることは、それを証明するための証拠を集めることです。

証拠の例としては、以下のようなものがあげられます。

長時間労働の証拠例
  • タイムカードや勤怠管理システムの履歴
  • PCのログインデータ
  • 警備記録
  • 業務メール など

タイムカードや勤怠管理システムなどの電子データは強力な証拠になりますが、複数の証拠を集めることで状況をより強く証明することができます。

STEP③:問題解決のためのコミュニケーションを取る

第三者を入れる前に、一度相手と話し合ってみることも一つの方法です。

例えば、パワハラをされていると感じていても、相手は指導の一環ととらえているかもしれません。

労働環境については、院長の知識不足から適切な労務管理ができていない可能性もあるので、複数人のスタッフで労働環境の改善を院長にかけ合ってみることも一つの選択肢です。

まめしば

とは言っても、状況によっては難しい場合もあると思うので、これはケースバイケースです。

STEP➃:総合労働相談コーナーに相談する

総合労働相談コーナーは、労働局や労働基準監督署などに設置されている、労働者のための相談窓口です。

法律について理解しようと思っても、素人が法律を正しく解釈するのは簡単なことではありません。

まめしば

私も公務員時代は、所管する法律の解釈に苦労した記憶があります。

総合労働相談コーナーでは、解雇、配置転換、賃金の引下げ、募集や採用、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象に相談にのってもらえるので、自分の職場環境が法律に違反しているのかどうかを相談し、確認することもできます。

STEP⑤:労働基準監督署へ通報

明らかに法律違反があり、証拠も十分にある場合は、労働基準監督署へ通報することで、立ち入り調査を行ったり、改善指導をしてもらえる可能性があります。

しかし、通報したからといってすぐに動いてくれるわけではなく、署内で状況を精査して立ち入り調査が必要かどうかを判断するため、必要がないと判断されてしまうと対応してもらえないケースもあります。

労働基準監督署に対応してもらうためには、最低限以下の3つが必要です。

  • 違反内容が労働基準監督署の扱う法律に関係していること
  • 違反を証明するための十分な証拠
  • 実名での通報

労働基準監督署は行政機関になるため、法律に基づいた指導しかできません。

いくら法律に違反していても、その内容が労働基準監督署の所管外の法律では、指導の根拠を示すことができないからです。

また、匿名での通報も緊急性が低いと判断されてしまう可能性があるため、病院の名称と自分の氏名を明かす必要があります。

実名を名乗っても、労働基準監督署が通報者の名前を外部に明かすことはありません。

ただ、動物病院など人数が限られている職場だと、誰が通報したか予測できてしまう可能性はあります。

労働基準監督署を動かす場合は、「もしかしたらバレるかも」という心積もりが必要かもしれません。

まめしば

結果的に転職をすることになってしまった場合は、しっかり情報収集した上で、同じ失敗を繰り返さないように注意しましょう。
効率的に情報収集するためには転職エージェントの利用がおすすめです。
次の記事では、私がおすすめする転職エージェントについてレビューしているので、ぜひ参考にしてください!

STEP⑥:専門家に法的アドバイスをもらう

労働基準監督署は法律に基づいた改善指導(必要であれば刑事告発)をするだけなので、未払いの賃金の支払いを求めたり、雇用主と交渉したりすることはありません。

個人的な労働問題を解決してもらいたい場合や通報しても労働基準監督署が動いてくれない場合は、弁護士などの専門家への相談がおすすめです。

まめしば

金額的な面でハードルを感じる場合は、先ずは行政で開催されている弁護士による無料相談などを利用してみるものも選択肢の一つです。

まとめ

今回は、動物病院で起こりがちな労働基準法違反や労働基準法違反に直面した時の対処法について解説しました。

動物病院業界しか経験していないと、長時間労働や残業代がないことが当たり前だと思ってしまっている人もいると思います。

そういう状態に陥らないためには、日頃から他業界の人と交流するなど、視野を広く持つことがとても重要です。

この記事を参考に、今の環境が将来的に自分のプラスになるのか、十分にスキルを発揮することができているのかということを考えてみてください。

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好条件の転職先を見つけた勤務獣医師に、注意喚起する獣医師

この記事を書いた人

動物病院と公務員で3回の転職を経験。
動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。2児の母。

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