型通りの仕事ばかりでやりがいが感じられない…
規定どおりに昇給はするけど、逆に将来が見えちゃってつまらない
公務員獣医師をするなかで、辞めたいと思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
安定の代名詞ともいえる公務員ですが、逆を言えば、型通りの仕事が多いことや、年功序列制度のせいである程度キャリアが見通せてしまうため、仕事がつまらないと感じてしまう人もいます。
この記事では、公務員獣医師を辞めたいと感じている人に向けて、次の4つについて解説します。
この記事を読むと公務員獣医師が仕事を辞めたいと思う理由や、公務員獣医師を辞める場合のメリットやリスク、転職を成功させるポイントがわかります。
公務員獣医師を辞めたいけど決断できなくて悩んでいるという人は、ぜひこの記事を参考にしてください!
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
公務員獣医師を辞めたいと思う5つの理由
収入も雇用が安定し、昇給や福利厚生もしっかりしているうえに、ワークライフバランスも取れていて、公務員といえば働きやすいイメージがありますよね。
私も臨床にいるときは、平均14時間勤務なのに時間的にも金銭的にも余裕がなく、仕事内容はともかく、公務員の働き方に魅力を感じていました。
動物病院勤務時代は、契約書ももらえなかたので何の保障もない働き方で、ワークライフバランスっていったい何?という状態でした(泣)
しかし実際公務員になってみるといいことばかりではなく、大変だと感じることもありました。
公務員獣医師が仕事を辞めたいと思う主な理由としては、次の5つがあげられます。
- 仕事がルーチンワーク
- キャリアの停滞感
- 対人関係のストレスが大きい
- 動物の殺処分をしなければならないことがある
- 定期的に異動がある
理由①:仕事がルーチンワーク
公務員獣医師の仕事がつまらないと言われる理由の一つは、ルーチンな作業や書類仕事が多いことです。
これは配属される部署や担当している業務、上司の采配により、量は変わってきます。
私がいた公衆衛生関係の部署では、担当業務を持ちつつ他の人の業務も手伝わなければならず、自分の担当以外の仕事についても勉強する必要がありました。
逆に色々なことを勉強しなければならず、来客もなく苦情の電話もなく単調作業だけに没頭できる日はホッとしたりもしました^^;
人数が限られていたこともあり、誰がいなくても業務が回るようにという上司の考えでした。
ただ、やはりお役所仕事と揶揄されるゆえんですが、公務員は何を決めるのも前例踏襲的な傾向があります。
個人のアイディアが採用してもらえることはあまりなく、仕事に対してモチベーションが上がらない要因になってしまっていると感じました。
また、どうしても規定通りに物事を進めなければならないので、融通が利かなかったり細かい部分を気にしなければならないことも頻繁にあります。
前例踏襲の傾向が強い理由は、次の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください。
理由②:キャリアの停滞感
収入や雇用の安定や、ワークライフバランスの取れた働き方は公務員の最大のメリットです。
収入額や昇給額、勤務時間などは規定でしっかりと決められているため、動物病院のようにクビ同然で辞めることになったり、病院の売り上げや院長の気分で突然昇給やボーナスがなくなったりすることもありません。
しかし逆を言えば、全てが規定で決まっているため、ある程度将来が見通せてしまうことも事実です。
公務員では、まだ年功序列制が残っているうえ前例踏襲の傾向が強く、民間企業のようにアイディアを出して成果を上げても直接評価されにくいことがあります。
それでも近年は、実績を評価する方針を取り入れている自治体も少しずつ出てきています。
そのため、上司の姿に自分の将来を重ねてしまうと、キャリアの限界を感じてしまいます。
人によっては、それが原因で仕事にやりがいを感じられなくなってしまう可能性があります。
理由③:対人関係のストレスが大きい
公務員獣医師は多くの人と接する機会があるため、対人関係のストレスから辞めたいと感じてしまうこともあります。
動物病院では少人数の濃い人間関係に悩む人が多いですが、公務員は多種多様な人と接するストレスがあると思います。
家畜保健衛生所に配属されれば農家の方と信頼関係を築く必要があり、動物愛護センター勤務では、時に身勝手とも思える苦情の電話や動物の引き取りを希望する人に対応しなければなりません。
私が所属していた公衆衛生関係の部署でも、電話や窓口でさまざまな人の対応をする必要がありました。
苦情の電話対応はもちろん、コワモテの業者さんに窓口で怒鳴られたことも何度かありました。。。
さらに公務員は定期的に異動があるため、組織の中で一緒に働く人が定期的に入れ替わります。
そのため、居心地のよかった職場環境が突然悪化したり、またその逆になる可能性もあり、異動はメリットにもデメリットにもなり得ます ^^;
理由➃:動物の殺処分をしなければならないことがある
公務員獣医師の役割は、動物の健康と福祉をとおして、人間の生活環境の向上や食品安全に貢献することです。
動物病院で働く獣医師と同じく動物の福祉に貢献することも役割の一つですが、最終的には人の生活を守ることに重点がおかれています。
そのため、高病原性鳥インフルエンザ、豚熱、口蹄疫など特定家畜伝染病が発生した場合は全頭処分しなければなりません。
また、動物愛護センターなどで動物の保護業務にあたると、飼い主の見つからなかった犬や猫を殺処分しなければならない場合が出てきます。
保護した動物の収容期間は自治体によって様々ですが、数日~長くても2週間程度です。
動物愛護法では飼い主を探し、飼い主がいないと思われる場合は譲渡をするよう努力義務が設けられていますが、施設の収容設備やお世話をする人員の関係で期間を区切らざる得ません。。。
同じ研究室にいた先輩は新卒で公務員になりましたが、1年目に動物愛護センターの仕事に就き、動物の殺処分が嫌で動物病院へ転職してしまいました。
動物が好きで獣医師になったのに、動物を殺さなければならないことに矛盾を感じてしまうと、仕事を辞めたいと思う要因になってしまいます。
次の記事では、公務員獣医師と臨床獣医師の役割の違いや、公務員獣医師のメリット・デメリットについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
理由⑤:定期的に異動がある
公務員にとって避けてとおれない異動は、メリットにもデメリットにもなり得ます。
私が感じる異動のメリットとデメリットを、以下にまとめてみました。
メリット | デメリット |
---|---|
さまざまな業務を経験できる さまざまな経験をとおして視野が広がる 獣医業務のジェネラリストになれる 嫌いな同僚と別れられる 仕事のできる人が上司になると仕事がやりやすい | やりたくない仕事もやらなければならない スペシャリストになれない(なりにくい) 仕事を一から覚えなければならない 人間関係を一から築かなければならない 管理能力のない人が上司になると仕事がやりにくい |
異動は、幅広い経験ができて視野が広がるととらえることもできます。
一方、人によっては仕事に慣れてきたところで異動になるとまた一から新しく仕事を覚えないといけないので大変だと感じる可能性もあります。
仕事内容だけではなく、業者さんや農家さんと時間をかけて築いてきた信頼関係も途切れてしまうことになります。
「どうせそろそろ異動になる」と思うと仕事に対するモチベーションも上がりにくく、さまざまな仕事が経験できるという反面、やりたくない仕事にも取り組む必要があります。
例えば、黙々と検査や研究をすることが性に合っていても、窓口業務がある部署に配属されれば地域の人や業者対応、電話対応などをしなければなりません。
異動は全ての人にとって避けられないため、異動を苦痛に感じてしまうと、仕事を辞めたいと思ってしまう可能性があります。
公務員獣医師を辞めるリスクは?
ここでは公務員獣医師を辞めるリスクとメリットについて解説します。
リスクについては次のようなことが考えられます。
- 雇用や収入が不安定になる可能性 公務員は雇用や収入が法律で保護されていますが、動物病院や民間企業では経営状況によりリストラされたり、給与やボーナスが減ってしまう可能性があります。
- ワークライフバランスの変化 民間企業では利益を上げる必要があり、成果や高いパフォーマンスが求められます。 成果が昇進や昇給に直結するためプライベートな時間を削って仕事をしたり、売り上げ目標を達成するために残業をすることもあり、ワークライフバランスが崩れやすくなります。
- 昇進やキャリアアップが予測しにくい 民間企業では、企業の業績や経済状況が昇進やキャリアアップに大きく影響します。 また、どれくらい成果を上げることができるかや、市場の変化に応じたスキルを身につけることができるかなど、さまざまな要因によってキャリアアップの予測がしにくくなります。
公務員でも部署によって状況は異なりますが、何といっても雇用と収入の安定性が強いことと、ワークライフバランスが取りやすいことが大きなメリットです!
状況に応じて柔軟な働き方をすることも必要ですが、ワークライフバランスが崩れた状態が続いてしまうと、結果的に仕事の質も落ちてしまいます。
動物病院や民間企業に転職をする場合は、他の雇用条件とあわせて、ワークライフバランスが取れた働き方ができるか情報収集をしっかりとするようにしましょう。
次の記事では、ワークライフバランスの重要性やワークライフバランスを向上させる方法について解説しいるので、ぜひ参考にしてください。
次に、公務員獣医師を辞めるメリットについてあげてみたいと思います。
- 能力・成果次第で待遇アップの可能性がある 動物病院や民間企業では利益を上げる必要があるため、病院や企業の利益につながる成果を出すことで、昇給や昇進という形で直接評価をしてもらいやすい傾向にあります。
- 専門性の高い仕事によりスキルを習得できる 公務員は異動を重ね幅広い業務を経験し、ジェネラリストとしてのキャリアを求められます。 一方、民間企業では専門的なスキルが重視され、スキル向上のための研修や資格取得支援が充実していることがよくあります。
- 個別にやりがいを追求しやすくなる 自分の希望する業種や分野の企業を選ぶことで、仕事にやりがいを感じやすくなります。 また、成果が評価に直結するため、成果を上げることがやりがいにつながります。
- キャリアの選択肢が増える可能性がある 公務員の場合、ルールに基づいて配属や昇進が行われますが、民間企業では専門スキルを身につけやすい環境であり、特化したスキルを持つことでキャリアの選択肢が広がる可能性があります。
公務員として働くことで安定は確実なものになりますが、将来がなんとなく見えてしまう部分で「つまらない」と感じてしまう人もいるかもしれません。
リスクを取りたくない人や、リスクの許容度が低い人は、公務員という働き方が向いている可能性があります。
多少のリスクをとってもやりがいを追求したい、挑戦してみたいと感じる人には転職をおすすめします。
高いポジションに就くことでも、高収入を得ることでもなく、後悔しない選択をすることが大切ですね。
次の記事では、後悔しないために転職前にやっておくべきことについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
公務員獣医師の転職先の候補は?
公務員獣医師の人って、どんなところに転職しているのかな…
公務員獣医師からの転職先で最も多いのは動物病院です。
動物病院の他にも、次のような職種に転職するケースがあります。
- 動物病院 人材不足のため獣医師であれば比較的就職しやすいです。 ただ、個人病院の場合は、違法な雇用条件で募集している場合もあるので注意してください。 (参考:募集要項のチェックポイント)
- NOSAI 大動物関連の業務を経験していると比較的就職しやすい傾向にありますが、経験がなくても、学ぶ意欲などをアピールすることで採用の可能性はあります。 また、地方の方が倍率も低く採用人数も多いため、採用される確率が高くなります。
- 製薬会社 製薬会社への転職を希望する場合は、疫学調査や検査業務など関連する業務の経験や知識があると採用に有利になります。 関連業務の経験がない場合は、製薬業界で求められるスキル(薬理学や臨床試験の知識)を自己学習したり、関連する資格を取得するとアピールポイントになります。
- CRO(企業から臨床試験を受託している機関) 薬理学や臨床試験に関連する経験やスキルがあると有利ですが、獣医師資格があれば経験不問で募集している企業もあります。ただ、専門性の高い業務なので、興味や学ぶ意欲は必要になります。
- 食品関連企業 食品衛生や法規制の知識や業務経験を持っている場合は有利になる可能性があります。 関連業務の経験がなくても、HACCPやISOなどの資格を取得したり、食品業界について知識を持っておくと強いアピールポイントになります。
獣医師資格は必須ではないことが多いようですが、製薬会社や動物医薬品メーカーのMR(営業職)に就く人もいます。
私も動物病院で働いていた時に、営業にきた同級生とバッタリ再会したことがありました!
企業に関しては、いずれの転職先もどのくらいのスキル・経験があるのか、採用したら活躍してくれそうかという点を重視されます。
今までの経験を業務に関連づけてアピールしたり、意欲や情熱をうまく伝えることがポイントといえそうです。
次の記事では、獣医師の主な就職先の仕事内容やキャリアパスについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
転職を後悔しないための3つのポイント
公務員から転職する決意をしたら安定志向から離れ、「自分で自分の人生を設計する」というマインドセットを持つことが大切です。
公務員を辞めたことを後悔しないためにも、次の3つのポイントをおさえておいてください。
- 自分が仕事に求めるものをよく理解する
- 希望の職種についてしっかりと情報収集する
- 長期的な視点でキャリア設計する
POINT①:自分が仕事に求めるものをよく理解する
自分が仕事にどんなことを求めているのかについて、自分自身がよく理解しておくことがとても大切です。
もちろん生活のために仕事をしている側面はありますが、それ以外にも仕事に何を求めているのか、仕事をとおしてどんなことを成し遂げたいのかについて考えてみてください。
例えば、「地域で不幸な亡くなり方をするペットを減らしたい」「新薬の開発に関わることで医療の発展に貢献したい」というような、仕事における信念を持っておくと気持ちがブレません。
次の記事では、このような自己分析について詳しく解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください。
POINT②:希望の職種についてしっかりと情報収集する
ここまでも公務員を辞めるメリットとリスク、公務員獣医師の転職先の候補などについて解説してきましたが、転職を希望する職種や転職先についての情報収集はとても重要です。
公務員を辞めて異職種へ転職する場合は、仕事内容はもちろん、その業界の風土や将来性などについてもしっかりと理解しておくことがミスマッチを防ぐことにつながります。
その上で、転職先の病院や企業についても、雇用条件だけではなく企業風土や職場の雰囲気を知る努力が必要です。
異職種の情報収集は難易度が高く大変ですが、情報収集はとても大切なので、利用できるツールは利用してHPに載らないような情報をなるべくたくさん集めましょう!
次の記事では、情報収集の方法について具体的に解説しているので、ぜひ参考にしてください。
POINT③:長期的な視点でキャリア設計する
転職を後悔しないためには、長期的な視点でどんなキャリアを歩みたいかを考えることも大切です。
「臨床の方がやりがいがありそう」「一般企業の方が能力や実績を評価してもらえそう」という目先のメリットだけで転職を決めてしまうと、予想通りにならなかった時に転職したことを後悔してしまうかもしれません。
わかっていても隣の芝生は青く見えてしまうんですよね ^^;
自分が仕事に何を求めているのかを理解することはもちろん、その職に就いてどんなことがしたいのか、将来的にどんなキャリアを築きたいのかについても考えておくことをおすすめします。
そうすれば、多少イレギュラーなことが起きても気持ちがブレません。
また、ある程度想定できるライフイベント(子育て、親の介護など)については、あらかじめキャリアプランに組み込んでおくと、不安や焦りに駆られることもなくなります。
不意に、焦りや不安におそわれると視野が狭くなり、「こうするしかない」「もう他に方法はない」と考えてしまいがちです。
次の記事では、キャリア設計の手順について4ステップで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、公務員獣医師を辞めたいと思っている人に向けて、公務員を辞めるメリットやリスク、転職を成功させるポイントについて解説しました。
私自身経験をとおして、臨床と公務員ではそこで働く人の仕事に対する価値観や求められる働き方には、大きな違いがあると感じました。
そのため、公務員の転職では他の職種よりも自己分析や情報収集が重要になってくると思います。
次の記事では、私が実際に利用してみておすすめだと感じた転職エージェントについてレビューしています。
転職エージェントを利用することで、自分のスキルについて客観的なフィードバックをもらえるだけではなく、情報収集の精度をあげることにもつながるので、ぜひ参考にしてください!
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