獣医師に限らず、仕事が思うように行かないと「この仕事に向いてないかも・・・」と自信をなくしてしまうこともありますよね。
でも同じような状況でも自信を失わず、それを糧に大きく飛躍する人もいます。
自信を失う人と失わない人の間にはどんな違いがあるのでしょうか?
それには自己肯定感がどれくらいあるのかが関係しています。
この記事では自信がなくなる原因と自信がなくなってしまった時の対処法について解説します。
- 自信がなくなる原因
- 自信がなくなってしまった時の対処法
- 自己肯定感の上げ方
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
自信がなくなるのはどんな時?
社会人になりたて、特に1年目は覚えることも多く初めてのことばかりで、自信満々で仕事にのぞめることの方がむしろ少ないですよね。
私が始めて就職した病院では、新人は獣医師でも受付やレジ業務をしなければならず、レジの打ち間違いで何度か看護師さんに怒られた経験があります。
元々基礎系の研究室出身で臨床系出身の人より出遅れてる感を持っていたので、「こんなこともできないなんて・・・」とよく落ち込んでいました。
そんな落ち込むことの多かった私が、「獣医に向いてないかも」と自信を喪失してしまった時の経験をもとに、どんな時に自信をなくしやすいかを解説したいと思います。
自信がなくなる時①:患者さんが亡くなってしまった時
担当している患者さんが亡くなってしまった時、特に助かる見込みがあったのに残念な結果になってしまうと必要以上に自分を責めてしまいがちです。
私の場合、以前嘔吐で受診した患者さんを亡くしてしまったことがありました。
午前中に嘔吐を主訴として来院したのですが、異物の疑いや身体検査上の問題もなく、元気や食欲もあるということで対症療法として内服を処方しました。
良くならないようなら再診して下さいとお話して一度帰したのですが、その日の午後に容態が急変して来院、そのまま亡くなってしまいました。
他の先生にも、初動対応としては問題なかったと言われましたが、
<最初に検査していたら原因に対応できていたかも・・・> <他の先生が診ていたら助かったんじゃないか・・・>
と、とても自分を責めた記憶があります。
しばらくして、飼い主さんがその子にそっくりな新しい犬を連れて来院した時は、少し救われた気持ちでした^^
自信がなくなる時②:診断がつかない時
色々検査をしても原因がわからず、診断がつかない時も力不足を痛感して自信をなくしてしまうことがあります。
中には除外診断でしか診断できない疾病もありますが、適切だと考えられる治療をしてもなかなか良くならないと
私の場合「この診断で本当にあっているだろうか・・・」と、ふと不安になることがありました。
経験を積めばそういう症例に出会う確率は必然的に高くなりますが、経験の浅い時期に出会ったこともあり自分の力不足に自信をなくしそうになりました。
自信がなくなる時③:飼い主からのクレーム
飼い主からクレームが入ると、時と場合によっては自信喪失に繋がることもあります。
中には明らかに言いがかりのようなケースもありますが、クレームは獣医師と飼い主さんに理解の齟齬が生じた時に発生します。
自分の説明の仕方に問題があったんだな、説明が足りなかったんだなと自分の未熟さを痛感した覚えがあります。
自信がなくなる時➃:ミスが重なった時
運悪くミスが重なることもあります。
一度のことであれば「次は気をつけよう!」と思えても、毎日、もしくは一日に何度もミスが重なると自信をなくしてしまうこともありますよね。
続けてではなくても同じミスを繰り返してしまった時も、できない自分を責めてしまいがちです。
ミスが重なってしまう時は、集中力や判断力が低下している証拠です。
集中力や判断力の低下が何からきているのか、一度立ち止まって考えてみる必要があります。
集中力が低下するのは、疲れ、睡眠不足、何かに気を取られている、のどれかに当てはまることが多いです。
自信がなくなるのには原因がある?!
同じ状況に陥っても、自信をなくすことなくやり過ごすことができる人もいますよね。
自信がなくなるのには原因があります。
ここでは自信をなくしやすい人と、全く動じない人の違いに注目して解説したいと思います。
原因①:疲れている
自信がなくなる原因の1つ目は、疲れているです。
疲れていると脳は物事を前向きに考えることができなくなります。
元気な時は人から何か言われても聞き流せるのに、疲れていると「あんな言い方しなくても・・・」と妙に心に引っかかってしまった経験はありませんか?
体の疲れはわかりやすいですが、脳疲労は気づかないうちに溜まっていくので注意しましょう。
- 集中力が続かない
- 些細なことでミスをすることが増えた
そんな時は脳が疲れているサインです。
脳疲労を起こすと、感情や情動を司る部分が上手くコントロールできなくなるため、不安や怒りといったネガティブな感情が生まれやすくなってしまうのです。
原因②:睡眠不足
自信がなくなる原因の2つ目は、睡眠不足です。
睡眠には体の疲労だけではなく脳の疲れを回復する役割があります。
睡眠不足になると脳疲労が蓄積して原因①と同様、不安や怒りといったネガティブな感情が芽生えやすくなってしまいます。
今は知りたいことがあるとパソコンやスマホで簡単に調べられますが、常に多量の情報に触れている状態は脳を疲れさせてしまいます。
睡眠をしっかりとることは脳疲労を回復させるのはもちろん、情報の取捨選択をし、記憶を整理するという重要な役割もあります。
原因③:自己肯定感の欠如
自信がなくなる原因の3つ目は、自己肯定感の欠如です。
自己肯定感とは、ありのままの自分を認め、自分を価値ある存在だと思える状態のことを言います。
自己肯定感が高い人は、ありのままの自分を認めている=自信がある状態なので、何か失敗をしてもそれを経験としてとらえることができます。
自己肯定感が低い状態だと、自分と人を比較して落ち込んだり、失敗を必要以上に恐れ、劣等感に支配され苦しむことになります。
一方、自己肯定感が高い人は自信があるので失敗を恐れずに挑戦し、結果飛躍する可能性が高くなります。
また自己肯定感が低いと、先輩からの注意や飼い主さんからのクレームなど、人から非難されると「なんて自分はだめなんだ・・・」と落ち込みますが、自己肯定感が高いと必要以上に落ち込みません。
疲れもなく睡眠も十分足りている状態でも自信が持てない場合、自己肯定感の欠如が原因の可能性が高いです。
もしネガティブな感情に襲われても、それを抑え込んで否定してしまうと返って自己肯定感の低下につながってしまいます。
次の記事では、弱音を否定する危険性について解説しているので、ぜひ参考にしてください!
自己肯定感を高めるには?
自己肯定感が高いとメンタルも強くなり、「自分ならきっとできる!」と前向きに挑戦できるようになります。
そして何よりとても生きやすくなると思います。
人は誰でも生まれた時から自己肯定感が低かったり高かったりするわけではありません。
自己肯定感が低くなるか高くなるかは、どのような環境で育ったかが大きく関係しています。
つまり自己肯定感の低さは、習慣によって身についたものです。
それなので、これをすればあっという間に自己肯定感が高くなる!という方法はなく、コツコツと自己肯定感を高める習慣を身につけることが一番確実な方法です。
方法①:スモールステップを刻む
自己肯定感を高める方法の1つ目は、スモールステップを刻むです。
自己肯定感が低いと、自信のなさから失敗を恐れ、完璧を目指す傾向がみられます。
完璧主義の人は理想を高く設定してしまい、なかなか達成できなくて落ち込む・・・という悪循環に陥ってしまいます。
いきなり高い目標を達成するのは誰でも難しいものです。
まずは小さな一歩(スモールステップ)から始め、その小さな一歩が達成できた自分を褒める習慣を身につけましょう。
例えば、初心者がいきなり心エコーをマスターするのはハードルが高すぎます。
- 循環器について知識をつける
- 心電図の理解を深める
- 腹部エコーでエコーに慣れる
- 手術や処置のない日は、昼休みを利用して1件心エコーの練習をする
- 心臓を頭の中で立体的に捉えらにれるようになったらドップラーの練習に移る
というように段階を踏む必要があります。
そしてスモールステップを達成したら、必ず自分を褒めることも重要です。
次の記事では、スモールステップ法について詳しく解説しているので
ぜひ参考にしてください!
方法②:プラス思考
自己肯定感を高める方法の2つ目は、プラス思考です。
どんな物事にもプラスの面とマイナスの面が存在しています。
プラス思考になるには、物事のプラスの面を捉える習慣を身につける必要があります。
一見すると嫌なこと、落ち込むこと、歓迎できないことでも、プラスの面を探す癖をつけましょう。
例えば、
- 雨が降っていて憂鬱… ⇒ 今日は患者さんが少ないかも
- 緊急オペでまた残業だ… ⇒ どうしたら効率よく終わるか手順を再確認しておこう、経験値が上がる
- 先輩に患者さんを押しつけられた… ⇒ 症例を多く経験できて勉強になる
このように、ネガティブに思える出来事には必ずプラスの側面が存在します。
最初は気持ち的にも受け入れにくいし、難しく思えるかもしれませんが
ゲーム感覚で続けてみてください。
続けるうちにきっと考え方が変わってくると思います^^
方法③:感謝の気持ち
自己肯定感を高める方法の3つ目は、感謝の気持ちです。
感謝の気持ちは最強のポジティブ思考です。
感謝の気持ちを持つことなく成功した人はいないといっても過言ではありません。
獣医師に限りませんが、仕事をしていると嫌なこと、理不尽なことばかりで前向きになれない時もありますよね。
それでも働きたくても働けない人からしたら、仕事をもって自活できる生活は羨ましく感じるでしょう。
体が不自由で寝たきりの生活をしている人から見たら、自分の足で歩いて好きな場所に行けることは夢のような生活です。
「相手が話をわかってくれない」 「処置をしたいのにやらせてもらえない」
激務の動物病院勤務では不満は探せばいくらでも出てきます。
それでも「ない」ことばかりに意識を向けていたら感謝の気持ちを持つことはできません。
日ごろから感謝の気持ちを持つことができるようになると、自分の言葉や行動も変わってきます。
言葉や行動が変わってくると、見える世界も変わってきます。
次の記事では、感謝の気持ちを持つことの重要性について解説しています。
最強のポジティブ思考である感謝の気持ちを習慣化する方法についても触れているので、ぜひ参考にしてください!
方法➃:言葉の使い方
自己肯定感を高める方法の4つ目は、言葉の使い方です。
自己肯定感には言葉の使い方が大きく影響します。
言葉は多くの場合相手に向かって発せられるものですが、発した言葉は同時に自分の耳にも入ってきます。
そのためネガティブなことばかり言っていると、同時に自分に暗示をかけているのと同じことになってしまいます。
また、言葉を発しなくても心で思っていること、頭の中で考えていることも同様の作用があるので、プラス思考はとても重要です。
そうは言っても、急にプラス思考になんてなれないよ
プラス思考には日々の習慣が必要なので、ある日急にプラス思考になるのは難しいかもしれません。
でも、何を話すかは今すぐにでも考えて決めることはできます。
心では正直100%そう思えなくても、話す内容はプラスの言葉を心がけましょう。
思ってもないことを口にするなんて・・・と最初は抵抗があるかもしれませんが、プラスの言葉を口にしていると考え方も自然と変わり、プラス思考に近づいていきます。
方法⑤:自己肯定感を低める要因から離れる
自己肯定感を高める方法の5つ目は、自己肯定感を低める要因から離れるです。
頑張って自分を褒めたりプラス思考の習慣を続けていても、それを否定する人が近くにいると効果は期待できません。
例えば、診療時間ギリギリに駆け込んできた患者さんに対して、
「早く帰りたかったのに・・・何でもっと早く来てくれないの」 ⇒「仕事が忙しいのに、頑張って早く切り上げて来てくれたんだろうな」
とプラスに変換しても、
「ほんと迷惑だよね!」 「早く帰れたのに最悪!」
このようにプラス思考を否定するような人が常に近くにいると、残念ながら感謝の気持ちを持ったり、プラス思考になることは難しいです。
同僚に否定的な人がいる場合は、少し距離を置いて付き合ったり、接触を最低限にするなど注意しましょう。
自分に合った職場に出会うためには?
自己肯定感が高くなると、今の職場に違和感を感じるようになるかもしれません。
ネガティブな自分のままなら違和感なく働けていた職場も、自己肯定感が上がると否定的なことばかり言う人を不快に思うようになったり、患者さんへの対応が雑に感じるようになったり・・・。
もし自己肯定感を上げる努力をして職場に違和感を感じるようになったら、良い意味での転職の兆候かもしれません。
類は友を呼ぶ、と言いますが、人は自分と同じ考えや行動をする人たちの中にいると心地よさを感じます。
自己肯定感が上がったあなたが、今の職場に違和感を感じるようになったということは、今の職場の同僚はあなたと同じ考えや行動をする人たちではなくなったということです。
違和感を持ったまま今の職場で働き続けると、せっかく努力して高めた自己肯定感がまた元に戻ってしまう危険性があります。
気持ちよく働くためにも、より良い仕事をするためにも、今の自分に合った職場に転職することをおすすめします。
転職の兆候を感じても、衝動的に行動に移してしまうと転職に失敗してしまう可能性がとても高いです。
転職には事前準備が必要です。
次の記事では、転職前にやっておくべきことについて解説しているので、ぜひ参考にしてください!
まとめ
臨床獣医師という仕事は心身ともにハードな仕事です。
自信をもって治療に当たればとてもやりがいを感じることができますが、自信がないまま続けているとやりがいどころか心を病んでしまう可能性もあります。
自信をなくしてしまう原因を考え、自己肯定感を高めて生き生きと仕事に取り組めるよう、この記事が参考になれば幸いです。
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