保定が上手くできないと、ベテラン看護師さんにため息をつかれたり無視されたりする。
院長が気分屋で、機嫌が悪いとよく怒鳴られる。
動物病院で勤務する人で、人間関係の悩みを抱えている人はとても多いです。
その理由は、動物病院には人間関係のトラブルが起きやすい要因が数多く存在するためです。
動物病院は限られた人数で長時間過ごすため、人間関係でトラブルを抱えてしまうと、居心地の悪い思いをするだけではなく、仕事にも支障をきたしてしまいます。
そこで今回は、獣医師向けに以下の4つについて解説します!
この記事を読むと、動物病院で勤務する獣医師が人間関係で悩まないためのポイントや、トラブルを抱えてしまった時の対処法がわかります。
動物病院で勤務している獣医師で、人間関係に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください!
私も過去に1度、人間関係が理由で転職をした経験があります。
詳しくはプロフィール記事をご覧ください。
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
動物病院で人間関係のトラブルが多い理由
動物病院で人間関係のトラブルが多い主な理由として、以下の4つがあげられます。
- 閉鎖的空間 一般的な動物病院は、民間企業のように他部署とのやり取りなどがなく、病院の中だけで仕事が完結してしまう、閉鎖的な環境です。そのため、その場特有の価値観が生まれる傾向にあります
- スタッフの人数が少ない 数人~十数人規模のスタッフで運営している動物病院が大多数です。企業病院では、規模が大きくなることが多いですが、それでも数十人です。人数が少ないと、一人一人に対するコミュニケーションのウエイトが大きくなるため、トラブルを招きやすくなります。
- 女性が多い 近年、獣医学部の男女比は半数以上が女性です。さらに、動物看護師やトリマーは大多数が女性になるため、動物病院で働くスタッフの過半数が女性となる傾向にあります。 女性は男性と比べて感情的で、主観に左右されやすい傾向にあるため、女性の人数が多いと人間関係が複雑になりやすくなります。
- 管理体制が不十分 動物病院は、獣医師が院長として独立開業することが一般的ですが、多くの獣医師は、経営者としての意識・知識がないまま開業してしまいます。そのため、管理体制が不十分なことで人間関係のトラブルにつながることもあります。
問題なく運営できている病院もあると思いますが、上記の要因に複数該当すると、トラブルの発生する確率が高くなるので要注意です!
動物病院で起こりやすい人間関係トラブル
動物病院には、院長、勤務獣医師、動物看護師、トリマー、受付の5つの役職があります。
病院によっては、看護師兼トリマーで採用していたり、看護師が受付業務を担当している場合も多いと思います。
ここでは、最も密に関わる院長、同僚獣医師、看護師との間で起こりやすい人間関係のトラブルについて解説します。
トラブル①:院長
動物病院では、院長との人間関係に悩みを抱える人が最も多く見られます。
一般企業では、通常社長(経営者)と関わる機会は滅多にありません。
それは、実務ではなく経営と管理が社長の仕事だからです。
一方、動物病院(特に個人病院)では、院長(経営者)は他の獣医師と同様に実務についていることがほとんどで、毎日のように顔を合わせ一緒に仕事をします。
そして、同様に仕事はしていても、院長と勤務医の視点は同じではありません。
院長は実務に携わりながら、経営者の視点でものを見ています。
患者さんに質の高い治療を受けてもらいたい、飼い主さんの気持ちに寄り添いたいという気持ちは共通していても、その中で削れるところは削り、より多くの利益を出さなければいけないからです。
院長の視点 | 勤務獣医師の視点 |
---|---|
・経費を抑える ・利益を上げる(手術、診察件数を増やす) ・病院のイメージ | ・働きやすい環境 ・質の高い治療(高性能の消耗品、良い薬など) ・時間をかけた丁寧な診療 |
そのため、スタッフが思うように動いてくれなかったり、オーバーワークになるとイライラして感情的になるパターンはよく見られます。
トラブル②:動物看護師
獣医師の中でも、特に新人獣医師は動物看護師との間にトラブルを抱えてしまうことがあります。
ベテランの看護師と新人獣医師の、その病院における知識量の差は新人獣医師<<<ベテラン看護師です。
大学で多少の知識と手技を学んでいたとしても、診療方針は病院により様々で、その病院のやり方を踏襲しなければいけません。
働き始めたばかりで、院内のことが何もわかっていない新人獣医師は、看護師を始め先輩スタッフに、院内のことを教えてもらわなければなりません。
それなのに、獣医師だからと虚勢を張ったり、逆に「これは獣医師の仕事じゃないから」といつまでも雑務を覚えようとしないと、看護師からの心象が悪くなり、トラブルに発展しやすくなります。
新人の頃は特に、院内のどんな業務も覚えようとする姿勢が大切です。
そうすると、困った時や忙しい時に、今度は看護師が手を貸してくれるようになります。
トラブル③:同僚獣医師
獣医師同士のトラブルで最も多いのは、診療方針や勤務姿勢を巡ってのトラブルです。
獣医師としてあるべき姿勢、提供するサービスの質や方向性などの価値観に相違があると、人間関係に影を落としてしまいます。
私が以前勤務していた病院での例ですが、診療に対して考え方が明らかに違うタイプの先生がいました。
選択肢は提案するけど、患者さんや飼主さんのQOLを総合的に判断するのがベスト!
治る可能性があるなら、獣医師として治療するのが当然!
オーナーも元気になることを望んで来ているわけだし、積極的に提案するべき。
それぞれ最善と思っている診療方針が違うので、B先生は時々A先生の判断に納得がいかず、「どうしてそういう方針にしたんですか」と詰め寄っている場面を何度か見かけたことがあります。
A先生はB先生を苦手としている印象はありましたが、A先生はほどよい距離感を持って、大人な対応をしていたので、院内の雰囲気に影響するほどではありませんでした。
また、私の同級生の例ですが、同じ病院に就職した二人が、働く姿勢を巡って険悪になってしまったケースがあります。
大学時代はとても仲の良かった二人でしたが、一人は激務の病院勤務に疲れてしまい転職を決意。
もう一人は「辞めるなんて無責任だ」と相手を非難し、友人関係に亀裂が生じてしまいました。
聞いた話だけなので何とも言えませんが、引継ぎなどをしっかりすれば、辞めること自体無責任ということはないと思います。
仕事を辞める権利はきちんと法律でも定められています。
人間関係でトラブルにならないためのポイント
人間関係でトラブルにならないためのポイントとして、以下の4つがあげられます。
- マインドセット 物事を前向きにとらえるマインドセットはとても重要です。 また、視野が狭い状態は、自分の価値観に固執したり、ネガティブ思考に陥りやすくなってしまいます。視野を広げることで、物事を客観視できるようになり、相手に対して柔軟な対応を取ることができるようになります。
- 自己肯定感を高める 自己肯定感が低いと自己防衛本能から、ミスを他人のせいにしたり、自分を守るために周囲に対して攻撃的になるなど、トラブルの元になる行動をしてしまう傾向にあります。 自己肯定感を高めることで、自分に自信が持てるようになり、物事を前向きに考えることができるようになるため、人間関係のトラブルが起こりにくくなります。
- 相手を受容する 頭から相手を否定したり、自分の意見ばかり主張するのではなく、まずは相手の意見に耳を傾けること(傾聴)が重要です。相手の意見に迎合するのではなく、意見に耳を傾けることで、相手を尊重する姿勢を見せることは、良好な人間関係を築く上でとても効果的です。
- 期待し過ぎない 相手への期待値が高いと、期待通りの行動をしてくれない相手に対し、怒りや失望を感じることになります。相手に過度な期待を持たないことで、人間関係のトラブル回避につながります。
自己肯定感を高める方法については、次の記事で詳しく解説しているので、ぜひ合わせて読んでみてください!
特に、マインドセットとして視野を広く持つことは、人間関係を良好に保つために有効です。
でも、視野を広げるにはどうしたらいいんだろう?
視野を広げるための主な方法としては、以下の5つがあげられます。
- 人に会う
- 読書
- 情報収集(マスメディア、SNSなど)
- 新しいことに挑戦する
- 複眼的思考をもつ
中でも、読書は隙間時間を利用して手軽にできるので
忙しい人におすすめです!
読書は、著者や登場人物の視点で書かれているため、様々なエピソードを通して物事を多角的にとらえることができるようになります。
また、読書により、読解力や想像力、論理的思考力が身につくため、他者とのコミュニケーションにもとても役立ちます。
注意点としては、視野を広げる目的においては、特定の著者の書籍を読み込むよりも、様々な人物の本を読むことが効果的です。
人間関係における読書のメリット
- 視野が広がる 様々な価値観に触れることで、偏見が減り、多様なバックグラウンドを持つ人々との関係が築きやすくなります。
- 想像力が高まる 特に小説や物語は、人の気持ちや背景を推察することで、想像力を高める効果が期待できます。
- 読解力が身につく 読解力が身につくと、相手の言葉を正確に理解、解釈する力がつき、行間を読む能力が高まります。その結果、相手の気持ちや考えを汲み取ることができるようになります。
- 論理的思考力が身につく 筋道立てて物事を考えることができるようになり、物事を客観視できるようになります。 また、自分の考えを正確に伝えられる一方、相手の意見も的確に理解することができるようになります。
トラブルを抱えてしまった時の対処法
人間関係でトラブルを起こしやすい人は、思い込みが強い、言い訳が多い、否定的な発言ばかりする、というようにいくつか特徴があります。
トラブルにならないように注意していても、相手がしつこかったり、不可抗力で巻き込まれてしまうこともあると思います。
トラブルを抱えてしまった時の対処法としては、以下の3つの方法があげられます。
トラブルを抱えてしまった時の対処法
- 素直に謝る 自分が間違っていたり、相手に誤解を与えてしまっていたら、先ずは素直に謝ることが基本です。それが、例え相手の勘違いであったとしても、トラブルになりたくないという意志表示のために先に謝る勇気を持つことはとても重要です。
- 自分が先に引く どうしても相手の意見や考えに納得できず険悪になってしまった場合、自分が先に引くことも大切です。 相手の意見を受け止めた上で、自分はこう思った、というように自分の意見を添えるようにしましょう。
- 距離を置く 上記のアクションに対して、それでも否定的、攻撃的な言動を続ける人に対しては、距離を取ることが最善策の場合もあります。
相手の意見に迎合するのではなく、自分の気持ちや意見を大切にすることも忘れないようにしましょう。
トラブルの対処に際して留意しておくことは、相手は自分の主張が正しい、自分の考え方が正義だと本気で思っているということです。
仕事のやり方や内容に関して、間違っていることは訂正する必要はありますが、考え方については相手の意見を否定するとトラブルになる可能性がとても高いです。
なぜなら、相手は数十年という長い時間その価値観で生きてきているので、昨日今日訂正したところで考え方が変わる可能性はかなり低いからです。
不毛な議論に時間や労力をかけるのは無駄にしかなりません。
人間関係のトラブルを避けるためには、先ずは否定せずに相手の話を聞き、それでも衝突してしまう可能性があるなら、できる限り相手と距離を取ることが重要です。
トラブルが解決しない場合はどうすべきか?
距離を置いても相手がしつこかったり、悪意のある嫌がらせを受けたり、もしかしたら上記の方法を試しても改善しないこともあるかもしれません。
そんな時は、上司(院長)に相談するタイミングです。
上司(院長)に相談しても解決しない、話を聞いてもらえない、適切な判断をしてもらえないという状況ならば、転職を選択肢の一つとして検討することをおすすめします。
状況が変わらないのであれば環境を変えるしか方法はありません。
人生は有限なので、どこに時間と労力を割くかということはとても重要です。
自分に与えられた時間をどこに、とのようにして使うのかをよく考えてみましょう。
次の記事では、転職前にやっておくべきことについてまとめているので、ぜひ参考にしてください!
まとめ
今回は、動物病院で勤務する獣医師が抱えやすい人間関係の悩みや、人間関係でトラブルにならないためのポイント、トラブルの対処法について解説しました。
動物病院はただでさえ閉鎖的な空間なので、人間関係のトラブルを抱えないためには相手と協調する意識がとても大切です。
相手を否定しない、相手の話をよく聞く、間違えたら素直に謝るということを頭の隅に置いておきましょう。
動物病院の人間関係に悩む獣医師は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください!
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