経験を積むために症例数の多い病院に転職したら、やりがい搾取で条件通りの給料がもらえない
アットホームな病院だと思って転職したら、人間関係が濃くて疲れる
転職に失敗したと感じて、転職をくり返してしまう獣医師は少なくありません。
とくに個人病院は、院長に経営の知識がなくて労働環境が悪い、人間関係がせまくて濃い、ということがよくあります。
そのため、肌にあわないと続けていくことが辛くなってしまいます。
でもその負担を考えると、転職回数は最小限にしたいですよね。
転職を成功させるためには、事前の準備がとても重要です。
この記事では、以下の2点について詳しく解説します。
この記事を読むと、転職前にやっておくべきことがわかり、転職の成功率を上げることができます。
転職を検討している獣医師の方は、ぜひ参考にしてください!
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
獣医師が転職に失敗してしまう4つの理由
転職は自分が成長できる機会でもありますが、決断には大きなリスクがともないます。
特に、事前の準備や情報収集が不十分なまま転職を決めると、高い確率で転職に失敗してしまいます。
獣医師が転職に失敗しやすい主な理由としては、次の4つがあげられます。
- 情報収集が不十分
- 条件を重視しすぎる
- 転職理由があいまい
- 転職で問題解決しようとしている
理由①:情報収集が不十分
情報収集は転職活動の生命線です。
情報収集が不十分だと、働きはじめてからミスマッチに気づいたり、判断材料が少ないため、妥協した決断をしてしまうことになりかねません。
実際、私の場合、1度目の転職に失敗してしまったのは、病院スタッフの人間関係についての情報収集が不十分だったことが原因です。
もし、問題の先輩獣医師が院長とはご近所さんで、昔ながらの間柄のため強く注意できないということを知っていたら、転職先には選ばなかったかもしれません…
そのため、HPの募集要項や転職サイトの求人情報のような表面化された情報はもちろんのこと、職場の雰囲気や人間関係など、表面化されない情報もしっかり収集する必要があります。
また、自分一人の独自な情報収集は、情報のかたよりを生むリスクがあります。
獣医師の転職は、一般企業の転職とは異なる部分も多く、情報収集が難しいと感じる人も多いと思います。
そのため、友人や知人の口コミや紹介に頼って、転職に失敗してしまうケースもあるので注意が必要です。
相手にとっては良い(または悪い)と感じても、あなたが同じように感じるとは限りません。
友人・知人からの情報は参考程度に受け止め、情報収集をするときは、なるべく複数の情報源を利用することが重要です。
理由②:条件を重視しすぎる
動物病院で勤務している人のなかには、長時間労働や収入が少ないことが転職理由の人もいるのではないでしょうか。
待遇面の改善を目的とした転職の場合は、それが転職の目的になってしまわないよう気をつける必要があります。
条件が魅力的でも、自分がやりたいことが実現できなかったり、院長の考え方や病院の方針に共感できないと、結果的に働きつづけることが苦しくなってしまいます。
もちろん、待遇面のチェックをしなくていいわけではありません。
ワークライフバランスのとれた働き方は、仕事の質をあげるためにも、人生を豊かにするためにも重要なことです。
自分がどんな仕事をしたいのかということとあわせ、まずはしっかりと自己分析をすることが大切です。
そして、今までの経験やスキルが生かせるのか、自分の価値観に合う職場なのかを判断したうえで、待遇面もチェックするようにしましょう。
次の記事では、ワークライフバランスを向上させる方法について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください!
理由③:転職理由があいまい
転職理由があいまいなまま転職の決断をしてしまうと、転職に失敗してしまう可能性が高いので要注意です。
まずは、「将来獣医師としてどうなりたいのか」「どんな働き方をしたいのか」という転職軸をはっきりさせ、そのためにはどんな環境で、どんな経験やスキルを身につければいいのか、ということを考えてみましょう。
転職の軸がないと、「あの人が嫌だから」「何となく仕事がつまらない」というように転職理由もはっきりしないまま、条件の良さで転職先を決めたり、転職をすることで問題解決をしようとしてしまいます。
私が転職に失敗してしまった大きな原因は、前の職場で感じた不満から「少なくともこういう環境だけは嫌だ!」と条件づけをして転職先を選び、自分のキャリアについての見とおしがなかったことです。
そのため、どの道を進むことが正解なのかわからなくて、自分自身でも先が見えず苦しい思いをしました。
自分の感情は尊重しつつも、転職してどうなりたいのかというポジティブな理由を持っておくことも重要です。
理由➃:転職で問題解決しようとしている
今の職場に不満があり、環境を変えることで問題解決をしようと考えている場合、同じような問題が起こったときに転職を失敗だと感じてしまう可能性があります。
特に、人間関係に問題がある場合、その人さえいなければ上手くいくと思ってしまいがちです。
確かに、人間性やコミュニケーションのとり方に問題のある人もいます。
ただ、すべてを環境のせいにしてばかりいると転職は成功しません。
残念ながら自分の理想どおりの職場というのはなく、多少の不満はつきものです。
もちろん、ストレスから体調を崩したり、ひどいハラスメントがある場合などは、転職で環境を変えることも必要ですが、問題に対する自分の姿勢を見直すことも重要です。
転職成功のポイント!転職前にやっておくべき4つの準備
転職失敗につながる理由を踏まえたうえで、成功のポイントとなる事前準備について解説します。
転職成功のポイント
- 精度の高い情報収集をする
- 自己分析をする
- 仕事をとおして実現したいことをはっきりさせる
- マインドセットを変える
POINT①:精度の高い情報収集をする
情報収集が重要なことはすでにお伝えしましたが、知識が不足していると情報収集が不十分なことに気づくことができないので注意してください。
募集要項を確認することはもちろん、次の方法も参考に精度の高い情報収集をしてください。
- 転職サイトの求人情報のチェック 転職サイトの求人情報は、多くの場合法律にそったフォーマットを使用しています。そのため、病院HPにない情報が載っていることがあるので、必ず一度はチェックするようにしましょう。(参考:動物病院の募集要項のチェックポイント)
- 転職エージェントの利用 転職エージェントは企業や病院とのつながりがあるため、職場の空気感や院長の人柄など、表面化されない情報をもっています。 さらに、転職エージェントを利用することで、一般には公開されていない求人情報や、さまざまな転職ノウハウを教えてもらうことができます。(参考:転職エージェントを利用するメリット)
- 雇用契約書(労働条件通知書)のチェック 雇用契約書など、労働条件が書かれた文書は、契約前に目を通すようにしましょう。 契約と同時に配布されることがほとんどなので、事前に確認させてもらえるようにお願いし、納得したうえで契約を結ぶことが重要です。
- 複数日実習に行く 実習は何日か、できれば1週間くらい行くことが理想です。 動物病院は日によって混雑具合や患者層が異なるため、1日だけではスタッフの人間性や、その病院で自分のやりたい仕事ができるのかはわかりません。 病院をさまざまな視点で総合的に評価するためには、1週間、少なくとも3日間は実習に行くことをおすすめします。
求人情報をチェックする時に注意しておきたいことは、募集要項の内容はあくまでも「見込み」だということです。
つまり、実際には募集要項と採用条件が違う場合もあるということです。
それって虚偽記載で違法なんじゃないの?
法律では、相手に対して書面で労働条件を示すことが義務づけられています。
ただし法律でいう書面は、求人票や募集要項のことではなく、個人に対して示す書面のことを指します。
つまり、法的に義務づけられている労働条件を示す文書は、雇用契約書または労働条件通知書のことを指すので注意しましょう。
あきらかに虚偽の場合や誤解をまねく書き方は違法になりますが、採用条件は必ずしも求人票や募集要項の内容どおりではないという点は覚えておきましょう。
また、より深く正確に情報収集をするためには、転職エージェントの利用ははずせません。
転職エージェントは表面化しにくい情報をもっているだけではなく、経験やスキルを客観的に評価してくれるため、自分の市場価値を知ることができます。
自分の市場価値がわかると、転職先の選択肢が増えたり、自分に合った職場がわかるのでミスマッチ防止にもつながります。
情報を持っていることと、その情報の生かし方(転職ノウハウ)を知っていることは、転職では強力な武器になります!
次の記事では、Vet Agentという獣医師特化型の転職エージェントについてレビューしています。
情報収集の精度をあげたい人は、ぜひ参考にしてください!
POINT②:自己分析をする
動物病院は、一般企業の就職活動とは異なり、院長との形式的な面談と実習で採用するかどうかが決まってしまうことがほとんどです。
そのため、動物病院で働く獣医師の中には、しっかりとした自己分析をしたことがない人もいるのではないでしょうか。
しかし、転職をするうえで自己分析を行うことはとても重要です。
なぜなら、「何のために転職をするのか」という転職軸や、自分に合った職場環境や働き方がわかっていないと、働きはじめてからミスマッチに気づくことになってしまうからです。
また、「自分のやりたいこと」と「自分に向いていること」が違う場合があるので注意してください。
たとえば、多くの症例を経験したい(=やりたいこと)と思っていても、物事にじっくり向き合う性格(=向いていること)だと、症例数の多い病院のペースについて行けなくて、転職を失敗だと感じてしまう可能性もあります。
自己分析では自分の経験やスキル、性格や価値観も含めて考え、転職の軸を決める必要があります。
そうやって自分自身について深く知ることが、結果的に転職の成功につながります。
次の記事では、自己分析をすることのメリットやポイントについて解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください。
POINT③:仕事をとおして実現したいことをはっきりさせる
仕事をとおして実現したいことがわかっていないと、「仕事がつまらない」「職場が合わない」というように、はっきりとした理由もなく、条件の良さだけにひかれて転職をして失敗してしまう危険性があります。
実際私は、キャリアアップを目指した1度目の転職では人間関係で失敗し、2度目の転職ではキャリアアップと人間関係を重視しましたが、将来の見とおしに不安を抱え公務員に転職することになってしまいました。
「仕事をとおしてどんなことを実現したいのか」を考えることは自己分析の一環になりますが、何のために働くのか、仕事に何を求めるのか、という軸となる考え方を持っておくことはとても重要です。
まずは仕事をとおしてどんなことを実現したいのかについて考え、それを実現するためにはどうしたらいいのかを逆算して導き出すのが近道です。
仕事の軸が決まったら、自分がどんなキャリアを歩みたいのかについても考えてみましょう。
方向性のないままなんとなく仕事をしていると、モチベーションが維持できなかったり、「このままでいいのかな…」と将来に不安を感じる原因になってしまいます。
次の記事ではキャリア設計のやり方や、キャリアチェンジでおさえておきたいポイントについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
POINT➃:マインドセットを変える
マインドセットとは、過去の経験や教育の内容、育ってきた社会、個人的な先入観などさまざまな要素によって形成される思考パターンのことを言います。
同じ出来事でも、人によってとらえ方が違うのは、マインドセット(考え方の癖)が違うからです。
マインドセットがポジティブなのか、それともネガティブなのかということは、仕事に対する姿勢や周囲との関わりに大きく影響します。
転職を成功させるためには、ポジティブなマインドセットが必要です。
マインドセットがネガティブな状態だと不満をすくい上げてしまいやすく、ささいなことを重大にとらえたり、気に入らないことがあるとブラックだと決めつけ、転職の成功を感じることができません。
環境や条件のよい職場を選ぶことも大切ですが、働く側がどのようなマインドでいるのかということも、転職を成功させるためには重要です。
次の記事では、転職の成功に必要なマインドセットについて解説しているので、ぜひ参考にしてください!
まとめ
今回は、獣医師が転職に失敗してしまう理由と、転職成功のポイントとなる事前準備について解説しました。
私は、正社員として3回転職を経験していますが、いずれも失敗に終わったと感じています。
失敗の原因は、自己分析が足りなかったことと、情報収集が不十分だったことです。
転職を成功させるためには、先ずは自分自身や自分が求めるものを深く理解し、確かな情報をできるだけ多く収集することが重要です。
そのためには、何のために働くのか、獣医師としてどういう働き方がしたいのかについて一度じっくり考え、しっかり準備してから転職に向けて動き出すようにしましょう。
なお、次の記事では転職をする上で最も重要な、情報収集のポイントについて詳しく解説しています。
転職を検討している人は、ぜひ参考にしてください!
コメント