獣医師として働ける場所って、動物病院以外に
どんなところがあるのかな?
獣医師の仕事って色々あるみたいだけど、どんな仕事が
自分に合ってるのかよくわからない…
就職を控えた獣医学部生のなかには、就職先についての情報収集が難しいと感じている人もいるのではないでしょうか。
動物病院以外にも獣医師が活躍する場はたくさんあり、職種によって仕事内容は大きく異なります。
そのため、待遇や収入面を重視して進路を選んでしまうと、仕事選びに失敗してしまうので注意してください。
この記事では、獣医学部生や転職の選択肢として異職種を検討している獣医師に向けて、次の2つについて解説します。
この記事を読むと、動物病院以外に獣医学部生が学生がどんな仕事に就いているのかや、自分に合った職場を選ぶためのポイントがわかります。
就職活動に向けて情報取集をしている獣医学部生や、異職種へ転職を考えている獣医師は、ぜひ参考にしてください。
- 動物病院と公務員で3回の転職を経験
- 動物病院勤務では、平均14時間におよぶ長時間労働やトップダウンの経営方針に悩む。
- 結婚を機に退職し、現在は獣医師のキャリア形成について発信。
- 2児の母。
獣医学部卒業後の主な就職先
近年では、卒業後の進路に動物病院を選ぶ獣医学部生が増え、その割合は6割近くになります。
動物病院以外では、産業動物の臨床医や公務員、製薬会社などが知られていますが、それ以外にも獣医師が活躍する場所はたくさんあります。
ここでは、獣医学部生の卒業後の主な就職先について解説します。
就職先①:動物病院
失業後の進路に選ぶ人が最も多いのが、小動物を扱う動物病院です。
仕事内容は、犬猫など小動物の病気の治療や予防です。
大学で学んだ知識を仕事に生かせるだけではなく、治療により動物が元気になる姿を見ることができ、飼い主さんから感謝の言葉をもらえる機会もあり、やりがいの大きい仕事です。
就職先に動物病院を選んだ場合、次のようなキャリアを進む人が多いです。
- 経験とスキルを身につけ開業する
- 比較的規模の大きい病院で勤務医を続ける
- フリーランス獣医師になる
- パートタイム勤務で仕事と家庭を両立(女性に多い)
臨床獣医師は、生き物が対象のため心身ともにハードな仕事であり、女性は40歳になるまでに8割の人が臨床を離れてしまうというデータもあります。
また、近年はペットの飼養頭数が減少傾向にある一方で動物病院の数は増え続け、利益を上げることが難しくなってきています。
そのため開業ではなく、規模の大きい企業病院で勤務医を続けたり、フリーランスという働き方を選ぶ獣医師も増えてきています。
パートタイムや時短勤務を採用する病院も増えています。
臨床獣医師の道を選ぶ場合、どんな動物を診るかだけではなく、働き方の選択肢も増えてきているのは嬉しい変化ですね!
- 3日以上(できれば1週間ほど)実習に行く
- 契約前に雇用契約書(労働条件通知書)で契約内容をしっかり確認する
- 給与の内訳や有休消化率を確認する
- 病院の雰囲気やスタッフ間の人間関係を把握する
- その病院で自分のやりたいことができるか確認する
次の記事では、企業病院やフリーランス獣医師で働くことのメリット・デメリットについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。
就職先②:公務員
獣医師として公務員になる場合、国家公務員と地方公務員の2つの選択肢があります。
ここでは、国家公務員と地方公務員の仕事内容や、就職先に公務員を選ぶ場合の注意点について解説します。
国家公務員
国家公務員で獣医師職があるのは、農林水産省と厚生労働省です。
獣医師免許は必須ではありませんが、環境省でも少数の獣医師が勤務しています。
農林水産省では、法の整備や国会対応などを行う本省勤務、家畜の伝染病侵入防止のために空港や港などの最前線で防疫にあたる動物検疫所、動物用医薬品の有効性・安全性の審査や検査を行う動物医薬品研究所などがあります。
次の表は、獣医系技術職員の仕事をまとめたものです。
配属先 | 仕事の概要 |
本省・地方農政局など | ・政策の企画・実行 ・法令作成 など |
動物検疫所 | ・輸出入動物の渓流検査 ・旅客の手荷物検査 ・畜産物の検査 ・輸出する犬猫等の検査 ・防疫資材確保 など |
動物医薬品検査所 | ・動物用医薬品の有効性・安全性の審査 ・ワクチンの検定 ・薬剤耐性対策 ・収去検査 など |
(独)家畜改良センター | ・家畜の育種改良 ・飼養管理の改善 ・飼料作物種苗の増殖、検査 ・牛個体識別業務など |
(国研)農研機構動物衛生研究部門 | ・新規ワクチン開発 ・病性鑑定 ・ワクチンなど希少試薬を10種類製造・配布 ・国際共同開発 など |
それ以外にも地方公共団体や他省庁、国際機関へ出向するケースもあるようです。
厚生労働省での獣医系技官の仕事は、大きく分けて食品安全分野、感染症対策分野、その他行政分野の3つです。
コロナが流行り出したころは、きっと大変だったと思います。。。
また、獣医系技官が配属される部署には、次のような組織があります。
厚生労働省 本省 | 大臣官房 | 疾病の予防・治療に関する研究の総括 | |
健康・生活衛生局 | 食品の安全対策、動物由来感染症対策 | ||
付属機関 | 検疫所 | 海港、空港の検疫業務、輸入食品監視業務 | |
地方厚生局 | 輸出食肉施設などに対する査察、指導 | ||
国立感染症研究所 | 感染症に関する研究・調整 | ||
国立保健医療科学院 | 公衆衛生に関する研究・研修 | ||
他府省庁 | 内閣官房 | 感染危機対応の統括 | |
内閣府 | ・食品のリスク評価(食品安全委員会) ・総合科学技術 ・イノベーションの推進 | ||
消費者庁 | 食品表示 | ||
環境省 | 動物愛護管理 |
こちらも、環境省や農林水産省などの他省庁、食品安全委員会、WHOや在外公館など海外機関への出向があるようです。
いずれの省庁もおおよそ2~3年のサイクルで異動があり、様々な業務経験を積みながら能力・評価に応じてキャリアアップしていきます。
- 係員:仕事を覚える 課の窓口や政策の企画・立案の連絡調整業務に従事。 国会・法令・予算など全体像を学ぶ。 政策の実行の現場で研鑽を積む。
- 係長級:知識を深め、課題に取り組む 異動、出向を通して視野を広げる。 先輩や上司と相談しながら、課題の解決に取り組む。 留学、研修、学位取得など、語学力や専門性を習得。
- 課長補佐級:特定の分野の主担当になる 担当する政策の具体的内容を企画・立案する。 現場の情報を収集し、より効果的な政策を実行する。
- 室長級
- 課長級
また、ワークライフバランスにも力を入れていて、ライフイベントをとおしても働きやすい職場になっています。
ただ、部署によっては(本省勤務など)忙しい可能性があります。
というのも、私は地方公務員時代に法律の解釈や通達の内容について、環境省の人と電話やメールで連絡を取り合うことがありました。多くの場合、「こんな時間まで仕事してたんだ…」と思うような時間帯に返信がきていることがよくありました。
地方公務員
地方公務員として働く場合は、都道府県と市町村に就職する2つの選択肢があります。
獣医師としての主な仕事内容は、次の表のとおりです。
食品衛生 | ・飲食店の開設許可 ・飲食店の監視・衛生指導 ・食中毒調査 など |
生活衛生(環境衛生) | ・理容所・美容所の開設許可および監視・衛生指導 ・公衆浴場の開設許可および監視・衛生指導 ・興行場(映画館、ライブハウスなど)の開設許可および監視・衛生指導 ・特定建築物の開設届受理および監視・衛生指導 ・水道施設の開設届受理および監視・衛生指導 ・墓地や化製場の開設許可 など |
食肉衛生検査所 | ・家畜の生体検査 ・食肉の細菌検査、理化学検査、病理検査 ・食肉処理施設の衛生管理指導 など |
家畜保健衛生所 | 畜産農家に対し家畜伝染病予防や衛生技術指導、病性鑑定 など |
畜産試験場 | ・試験場で飼育されている家畜の管理 ・新たな伝染病の発生に備えて、対応策や防疫計画を策定・実行 ・家畜の健康や生産性向上を目的とした試験・研究を実施 ・畜産農家への技術指導・普及 など |
衛生研究所 | ・感染症や食中毒の原因微生物の調査 ・農産物や有害物質の分析 ・遺伝子組み換え食品の検査 ・問題になっている感染症、病原体、化学物質についての調査・研究 など |
畜犬の登録管理 | 狂犬病予防法に基づく畜犬の登録管理 |
動物愛護業務 | ・迷い犬や猫の収容・保護 ・動物の適正飼養や動物愛護の普及啓発活動 ・動物取扱業や特定動物の開設届の受理および監視・衛生指導 など |
家畜保健衛生所、畜産試験場、衛生研究所は都道府県の機関になるので、市町村で働く場合は配属されません。
各部署の仕事内容は、次の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください!
地方公務員の場合、自治体の規模や評価制度によって昇進スピードは異なります。
また、上司の評価基準、その上司との相性、与えられる仕事内容などは、その時々で違ってくるため、昇進スピードは時の運に左右されることもあります。
- 主事:20代
- 主任:20代後半~30代前半
- 係長:30代後半~40代前半
- 課長補佐:40代中盤
- 課長:40代後半~50代前半
- 部長:50代中盤
他の自治体に就職した友人は、「5年経つと自動的に主任になる」と言っていました ^^;
キャリア初期の昇進は経験年数によるところが大きいようです。
私が勤めていた自治体では、30代で係長になる人もいれば、40歳で主任のままの人もいたので、主任以降は能力や仕事に対する評価で昇進スピードに差が出てくる印象でした。
公務員は、動物病院のように誰かから直接感謝される機会はありませんが、食の安全を守ったり、水際で防疫の最前線に立っている、畜産業の発展に貢献しているという意識を持つことができればやりがいのある仕事だと思います。
- 臨床獣医師のように直接人から感謝される機会はめったにない(やりがいの感じ方が異なる)
- 国家公務員や首都圏の地方公務員は年齢制限が低く設定されているため、転職先に考えている場合は早い判断が必要
- 必ずしも希望の部署に配属されない。希望が叶っても周期的に異動がある。
- 部署によっては激務になる可能性もある
就職先③:産業動物の獣医師
獣医学生にはよく「大動物」という通称で呼ばれていますが、牛、馬、豚、鶏などの家畜が診療対象となります。
NOSAI(全国農業共済協会)に就職し、家畜共済に加入している家畜の診療を行うケースが一般的ですが、企業が経営する農場や牧場やフリーランスとして開業する選択肢もあります。
主な仕事内容は、次のとおりです。
- 診療・治療 牛、豚、鶏などの産業動物に対して病気やけがの診療・治療を行う。
- 予防医療 ワクチン接種、寄生虫駆除、健康診断など
- 出産介助 牛や豚の分娩をサポートや母子の健康管理
- 繁殖管理 人工授精、種付け、受胎確認などの繁殖関連の業務
- 衛生管理指導 畜舎の衛生管理や飼料の管理方法について農家に指導を行う。
- 感染症対策: 伝染病の発生時にすみやかに対応し、感染拡大を防ぐための措置を行う。
- 検査・診断: 血液検査や細菌培養などを行い、病気の診断をサポートする。
- 行政との連携: 保健所や農林水産省などの行政機関と連携し、法令に基づく検査や報告を行う。
- 農家への指導 農家や畜産従事者に対して動物の健康管理に関する教育や指導を行う。
また、診療のミスは農家さんの経営に直結するため、経営管理も仕事の一部といえます。
1日に数十件農家さんを回ることもあり、終わってからも採血した血液の検査、器具の洗浄、カルテの入力など、農家さんの状況によっては業務量が多くなることもあります。
対象が大動物であり、出産の対応で夜中の呼び出しがあるなど、肉体的にハードな仕事です。
また、農家さんと良好な人間関係を築くことも重要なため、コミュニケーション能力も必要です。
キャリアパスについては、NOSAI北海道がキャリアマップを公開しているので、参考にしてみてください。
勤務場所によって上司の評価基準や方法は異なるので、NOSAI北海道のキャリアマップはあくまでも参考程度に留めておいてください。
- 動物病院と同様に体力が必要
- 畜産農家さんとの信頼関係を築くまで人間関係が大変な場合がある
- 募集要項に週休2日、土日休み等の記載があっても緊急手術などで夜間対応や休日出勤がある
- 産休・育休などの福利厚生は整っている
就職先➃:動物園・水族館
動物園は欠員が出ないと募集されない、非常に狭き門です。
それでも動物園や水族館への就職を希望する人は、幼い頃からその職業に憧れをもって獣医学部へ進学した人も多く、動物病院や公務員など他の職種に一度就いてから欠員が出るのを待つ人もいます。
また、なかには獣医師免許を持っているけれど、飼育員として働きながら空きが出るのを待つ人もいます。
私は学生時代サファリパークに実習に行ったことがありますが、2人いた獣医師のうち1人は動物病院から転職された方でした。
動物園や水族館獣医師の主な仕事は動物の診療・治療ですが、次のような仕事も行います。
- 動物の診療業務
- 動物の飼育業務
- 死亡した動物の解剖
- 園内の防疫関連業務
- 教育・啓発活動
- 広報関連業務
- 園内イベントへの従事
- 他園との動物交換などに関する事務業務
- 標本の作製
獣医師は動物の診療・治療だけではなく、清掃などの飼育業務や、来園者に動物種の保護や自然環境の重要性を伝える教育・啓発活動など幅広い仕事をこなすことになります。
また、日ごろから動物の状態を把握するための観察力や、生態がよくわかっていない動物について学び続ける探究心が必要です。
給与面については、中堅獣医師では年収450万円程度と、それほど高くありありません。
しかし、普段触れ合わないような動物と関わることができたり、種の保存や研究・調査の一翼を担っているという点でやりがいの大きい仕事だと思います。
また、水族館や動物園には民間が運営しているものと公営のものがあり、自治体が運営している動物園や水族館に就職する場合は公務員試験を受けて合格する必要があります。
さらに、公務員試験に合格できたとしても必ず希望の部署に配属されるとは限らないので、異動を繰り返しながら気長に待つ必要が出てきます。
夢のある仕事ですが、ある自治体で動物園獣医師をしていた人から聞いた話では、予算が限られているので苦しいと言っていました^^;
次の記事では、公務員獣医師のやりがいと苦労について解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください。
就職先⑤:競馬組織
競馬組織に就職する場合は、次の2つの選択肢があります。
- 日本中央競馬会(JRA): 全国各地にある10ヵ所の競馬場(函館、札幌、福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神、小倉)で開催されるレースを全て運営している。全国的に異動の可能性がある。
- 地方競馬会(NRA): 主催は各競馬場がある自治体。NRAに就職した場合、各自治体の競馬組織組合員は地方公務員となる。
採用はJRAが毎年5~6名、NRAは若干名であり、いずれも非常に狭き門となっています。
仕事内容については、JRAは臨床獣医職と研究職があります。
臨床獣医職 | 競走馬の病気・外傷を治療する診療業務、 予防注射・入廐検疫を行う防疫業務 健康状態のチェック など |
研究職 | 競走馬全般に関する調査・研究 (競走馬の運動データの解析、ケガを起こす要因や予防法など) |
入厩(にゅうきゅう)検疫とは、施設に馬が入厩(にゅうきゅう)する際に、病気にかかっていないか、ワクチンは打たれているか、違う馬ではないかなど、さまざまな検査を行うことです。
NRAについても、競走馬の診療、管理指導、衛生防疫、理化学検査、入廐検査などが主な業務になります。
さらにレースの開催日には、馬体検査、蹄鉄の検査、馬体重の測定、検体採取(薬物検査)など、競馬開催に関する業務も行います。
競馬関係の就職情報って少ないけど、馬の授業に力を入れている大学の方が就職は有利なのかな?
確かに、馬に関する勉強や経験が豊富な大学で学ぶことは就職に有利になる可能性があります。
北海道大学、帯広畜産大学、大阪府立大学、山口大学、鹿児島大学は欧州獣医学教育認証を取得しています。
欧州獣医学教育認証では馬についてのプログラムを扱うことが義務づけられているため、より馬の臨床について学ぶことができます。
帯広畜産大学では総合馬科学教育プログラム、山口大学では馬救急医療実践力育成プログラムを用意し、鹿児島大学では共同獣医獣医学部付属病院に馬専用診療施設である軽種馬診療センターを設けています。
この5つの大学に入ってないと採用してもらうのは難しいのかな?
馬の臨床についてより学べる可能性が高いので、採用試験でのアピールポイントにはなりますが、出身大学で採用に差がでるわけではありません。
JRAでは獣医学生を対象にした研修会や実習にサマーキャンプなどを実施し、仕事体験の場を設けています。
競馬組織への就職を検討している人は、人脈づくりや馬に関する知識を増やすためにも、こういったイベントに参加しておくといいのではないかと思います。
令和5年度の獣医職職員の平均年収は、次のように公表されています。
人員 | 平均年齢 | 年間給与額(平均) | |
獣医職 | 112人 | 41.3歳 | 10,601円 |
初任給は272,700円(2024年4月実績)となっていて、とりわけ高いわけではありませんが、昇給が比較的安定しているため、キャリア終盤では他の職種に比べて高い収入が期待できます。
- 就職活動に早めに取り組み、研修や実習に積極的に参加する
- 馬に関わる機会を増やし、馬や業界の知識を増やす
- エントリーシートの書き方、筆記試験、面接対策をする
- JRA、NRAともに、棒給表によって給与が決められているので、能力や実績は直接給与に反映されにくい
就職先⑥:民間企業
民間企業に就職する場合、人気の就職先として製薬会社があげられますが、次のような職種でも活躍の場があります。
- ペットフードメーカー ペットフードやサプリメントの開発、品質管理、研究など
- 動物用医療機器メーカー 診断機器や治療機器の開発、マーケティング、営業など。
- バイオテクノロジー関係の企業 動物モデルを使った研究や新薬の開発、遺伝子研究など。
- CRO(企業から臨床試験を受託している機関) 臨床試験や研究開発を受託し、その運営やデータ収集、解析を行う、実験動物の飼育管理
- 獣医療検査会社 臨床病理医として、組織検査、剖検、診断報告書作成など。
- 動物保険会社 保険設計、保険契約の審査、動物医療費の統計分析など。クレーム処理や顧客サポートを行うこともある。
- 食品業界 動物の健康管理、食品安全や品質管理に関わる業務など。
製薬会社の中には、バイオテクノロジー分野に強みがある企業もあります。
民間企業に就職した場合のキャリアパスは、職種や業界、役職によってさまざまです。
年収については平均700万円ほどで、初任給は他の職種と比較してやや高めです。
順調にキャリアを築き管理職に就くことができれば年収1,000万円前後の高収入が得られる可能性があります。
- 転職する場合は、直接動物に関わっていた時のようなやりがいはなくなることを理解する(やりがいの形が変わる)
- 就く職業によっては、専門知識をそこまで活かせない場合もある
- 就く職業によっては数字などで成果を求められる傾向にある
動物病院へ就職する人が過半数を占めるなか、民間企業の情報集は難易度が高いですよね。
そんな時は転職エージェントを利用した情報収集がおすすめです。
結果的に転職エージェントをとおして就職しなくても無料で利用できるので、ぜひ就職活動に利用してみてください ^^
次の記事では、おすすめの転職エージェントについてレビューしているので、ぜひ参考にしてください。
就職先⑦:大学・研究機関
獣医師として研究職に就く道もあります。
研究機関としては、大学以外にも次のような就職先が選択肢になります。
- 農林水産省や厚生労働省の管轄機関 農研機構、国立感染症研究所、家畜衛生試験場など。
- 独立行政法人 動物衛生研究所、食品総合研究所など。
- 民間企業の研究所 大手製薬会社の研究部門やバイオテクノロジー企業の研究所など。
大学に就職した場合のキャリアパスは、次のような経過をたどります。
- ポスドク(博士研究員) ※大学の教員ではない
- 助教授
- 講師
- 准教授
- 教授
ポスドクとは大学院博士後期課程(ドクターコース)の修了後に就く、任期付きの研究職ポジションです。
研究員なので大学の教員ではありません。
月額給与水準は30~40万円ほどになりますが、研究プロジェクトや企業の受託研究などの予算によるため、給与はブレ幅が大きく不安定です。
また、私立大学の教員の方が国立大学よりも高くなり、地域手当の関係で都心部の方が地方の大学よりも高くなります。
国立大学は各大学が給与水準を公表しています。
以下は、東京大学の大学教員のモデル給与です。(「国立大学法人 東京大学の役職員の報酬・給与等について」より)
- 27歳(助教博士修了初任給): 月額289,600円 年間給与4,337千円
- 35歳(助教): 月額395,784円 年間給与6,588千円
- 50歳(教授): 月額575,034円 年間給与9,826千円 ※扶養親族がいる場合には、扶養手当(配偶者6,500円、子1人につき10,000円)を支給
教員になると、研究だけではなく教育や大学の運営業務などにも関わらなければなりません。
また、農林水産省や厚生労働省の管轄機関に勤務した場合の年収は、基本的に公務員と同じような水準です。
ただ、勤務場所による地域手当や、役職がついたり管理職になると役職手当がつくため大幅に年収が増えます。
自分に合った就職先を見つけるためのポイント
就職先の選択肢が多すぎて、自分がどういう仕事に向いているのかわからない…
選択肢が多すぎると自分がどの仕事に向いているのか迷ってしまうこともありますよね。
獣医学生のなかには犬猫の獣医師になりたくて獣医学部に入ったけれど、将来性や労働環境に不安を感じて悩んでいる人もいるかもしれません。
ここまで各職種についてのキャリア形成や収入面について解説してきましたが、職場の待遇や収入面を重視し過ぎてしまうと就職に失敗してしまう可能性が高いので注意が必要です。
自分にあった就職先を見つけるためには、次の3つのポイントをおさえておくことが重要です。
自分にあった就職先を見つけるためのポイント
- 詳細な自己分析 自分のやりたいことだけではなく、どんな働き方がしたいのか、どんな環境であれば自分の能力を発揮できるのかなど、詳細な自己分析をすることでミスマッチを起こしにくくなります。
(参考:自己分析のメリットとポイント) - 精度の高い情報収集 給与や待遇面、キャリアアップの可能性だけではなく、職場の雰囲気や人間関係など、募集要項に載らないような水面下の情報も収集することが重要です。(参考:情報収集のポイント)
- キャリアパスの設定 長期的な視点で、将来獣医師としてどうありたいのかという着地点を決めておくことが重要です。(参考:仕事軸を明確にする)
私は、転職に失敗してしまったのは自己分析や情報収集が足りていなかったせいだと感じています。
当時の私は「こういう職場ならやっていけそうだな」という、ぼんやりとした理由で転職先を選んでしまっていました。
そのせいで、獣医師としての将来の見とおしに不安を感じたり、自分に自信がもてなくなってしまった時期がありました。
ゴール(将来の目標)を決めずに走っていたら、息切れを起こすのも当然ですよね ^^;
まとめ
今回は、獣医学部生や転職を考えている獣医師に向けて、主な就職先を6つ紹介しました。
注意したい点は、条件がいい職場が自分にあう職場とは限らないことです。
終身雇用が当たり前だった時代に比べ、今は転職することが当たり前になりつつあります。
失敗をしてしまってもやり直すことはできますが、できることならミスマッチはなくしたいですよね。
しっかりとした自己分析と主体的に情報収集をすることで、確実にミスマッチは減らすことができます。
今回の記事が、就職活動を控えた獣医学生や転職を検討している獣医師の方の参考になれば幸いです。
また次の記事では、就職や転職をする前にやっておくべきことについて解説しているので、ぜひあわせて読んでみてください!
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